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創立150年を超えた老舗の歴史を、包装紙と共に振り返る。丸善包装紙図案集

本屋の老舗丸善が2019年、会社創立150周年を迎えた。明治2年に高級雑貨を扱う輸入商社として開業、翌年には東京日本橋に本屋〈丸屋善七店〉をオープンし出版も手がけている。そんな老舗の歴史を包装紙と共に振り返る。

Photo: Shin-ichi Yokoyama / Text&edit: Kaz Yuzawa

代々、顧客に愛されてきた丸善の包装紙。

その昔、名店のきれいな包装紙を丁寧に広げてアイロンをかけ、大切そうに仕舞っていたおばあちゃんの姿を覚えている人はいるだろうか。

名店のプライドと誠意が込められた包装紙は、かつてそうやって再利用されたものだ。現在、丸善雄松堂に保存されている過去の包装紙の多くも、顧客の人たちが家で保存していたものを寄贈してくれたのだという。“丸善の包装紙”は顧客にとってそういう存在だったのだ。

改めて眺めてみるとどの図案も気が利いていて、取っておきたくなる気持ちはデザイン的にも理解できる。

丸善の前身である丸屋商社は明治2(1869)年、横浜で産声を上げた。実に日本の株式会社第1号である。しかし丸善の歴史を紐解くと、ほかにも日本第1号がゴロゴロ出てくる。従業員のための生命保険制度の導入、商品券の発案、万年筆の命名&輸入販売、PR誌の発行。

また、日本でクリスマスの風習を採り入れたのも丸善が先駆けだという。戦前からクリスマス用包装紙を特別に制作し、クリスマス文化を日本人の生活に定着させることに一役買っていたのだ。子供たちへのプレゼントに丸善のクリスマス包装紙に包まれた絵本を小脇に抱えて家路を急ぐ紳士たち。何とも微笑ましい。

現行の黄色い日本地図の包装紙は、地図上の店舗数こそ増えているが、基本デザインは昭和27(1052)年から変わっていない。

ブックカバーとしても使われているこの図案は、今や丸善のイメージそのもの。ちなみに明治期に使用されたクラフト紙に濃紺の欧文文字が印刷された包装紙の時代から変わらず、丸善の包装紙はブックカバーとして顧客の間で愛用されてきたという。

そして丸善の包装紙には創業以来変わらない点がもう一つ。それは図案制作を外部の有名デザイナーに委ねず、社内で制作してきた点だ。包装紙は書店の顔とも言うべき存在。老舗の顔に責任を持つのはその社風を身につけた社員であり、だからこそ代々、顧客から愛され続けてきたのだろう。