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〈マーガレット・ハウエル〉一枚のシャツに込められた手作りの温もりと熟練の技

〈マーガレット・ハウエル〉が、職人によるシャツ作りをドキュメントしたショートフィルムを制作。過去にエドモントンの自社工場を取材した『ブルータス』(2018年10/1号)の記事と共に、老舗ならではのクラフトマンシップを紹介する。

Photo: Aya Sekine / Text: Yumi Hasegawa、BRUTUS

ノースロンドンの工場で撮影した
ショートフィルムが公開

〈マーガレット・ハウエル〉が映像作家エミリー・リチャードソンとコラボレーションし、ノースロンドンのエドモントンにある自社工場にてショートフィルムを制作。シャツのレイアウトのカッティングからフィニッシング、確認まで、ブランドの真髄である不変のシャツを作る過程を見ることができる。

“The Unit 7”ではシーズンごとにセレクトしたシャツの生産をひとりのマシーニストが全工程担う「丸縫い」で行なわれる。

2018年、ブルータス編集部は
エドモントンの自社工場を取材

1970年、シャツ作りからブランドをスタートしたマーガレット・ハウエル。マーガレット女史のシャツに対するこだわりと愛情は強く、いつかロンドンに自社工房を構えようと構想を抱いていた。そして2001年、ロンドン北東部・エドモントンのオフィス内に、念願のシャツ製造ラインを設立する。「エドモントン・メイド」を標榜するシャツラインの最大の特徴は、パーツごとに流れ作業で作るのではなく1人が1着を丸縫いしていること。

7人のマシニストと呼ばれる縫製職人が在籍しているが、1日に1人3枚程度の生産が限界。理由は、一枚一枚注意深く、丁寧にミシンを扱っているから。例えば、縫い幅や縫いしろはすべて同じ幅。ストライプやチェックの場合、身頃や襟の縫い目の柄がすべてぴったりと合って、まるで一枚の布から型抜きしたかのようだ。それぞれの工程の途中で、プレスマシンで何度も折り目をつけてから次に進むなど、見えない部分にまで丁寧で精巧な仕事ぶりが徹底されている。

MARGARET HOWELL
柔らかな風合いのプルオンシャツ。スタイルに合った素材選びにもこだわりが。

そのため、マシニストは自分が縫い上げたシャツに絶対の自信を持っている。一枚一枚に担当者のイニシャルが縫い込まれており、誰が作ったシャツなのか、一目でわかるのだ。愛用者の中には、お気に入りのマシニストのイニシャルを探して買っていく人もいるとか。

MARGARET HOWELL
自然光がたっぷり入るかつての倉庫の2階に、ミシンの音が響く。

英国が誇るクラフツマンシップの継承者であるマーガレット・ハウエルでは、パターン作りも自社内で行っている。

エドモントンの工房では、名物カッターのカークさんがそのパターンをもとに、すべての布地を手作業でカット。一枚のシャツはおよそ20個のパーツからできているが、柄をマッチングさせつつ、布地を無駄なく効率よくカットしていくのは至難の業。長年経験を積んだカークさんに対する、チームの信頼の厚さにも納得がいく。縫い上がったシャツは仕上げにプレスされるが、マーガレットの嗜好に合わせ、素材の温もりや個性を感じさせる仕上がりになるよう、絶妙な匙加減でアイロンが施される。工房内には家庭用の洗濯機があり、中には、あえて洗いをかけることで風合いを出すコットンやリネン素材もあるという。

一見シンプルだが、小さなディテールにも目を配り、完璧な着心地のよさを追求したマーガレット・ハウエルのシャツ。中でもこのエドモントンで1着を1人の職人が丸縫いする、まるでビスポークで仕立てたような逸品が、着る人を惹きつけている。