あの漫才師の、あのワザを見よ。

長峰正典
もともとあった「譬えツッコミ」という技を、確立させた人がフットの後藤さんでしょうね。
高倉陵
後藤さんは、昔はボケもやっていたじゃないですか。だから、ツッコミになってもセリフが面白くて深みがあるのかもしれない。

ギャップを感じた時に「高低差ありすぎて耳キーンなるわ!」など、一度聞いたら忘れられない譬えツッコミを繰り出す後藤さん。このツッコミは、漫才中のみならずバラエティのフリートークでも活躍。彼の絶妙な譬えはプロからの評価も高い。
長尾丈史
どんなアドリブにも対応して成立させてしまうアンタッチャブルの柴田さんのツッコミも天才的な技だと思います。
金沢まさえ
柴田さんが、山崎さんのボケに対して笑ってしまっているのを見て、つられて笑ってしまいます。なのにツッコミは超的確。

巻き舌で畳み掛けるようなツッコミを繰り出す柴田さん。予想外のアドリブボケを繰り出す山崎弘也さんへの、的確なツッコミに多くの芸人から評価が集まった。床を叩いて爆笑しながらも、山崎さんのボケを何倍も面白くする、その対応力はお見事。
嶋田恭兵
笑い飯さんのダブルボケは真似したくなるほど印象的でした。
長尾
僕らがあのスタイルを思いついていたらなーって思います(笑)。

Wヤングや横山やすし・西川きよしなど、2人ともボケてツッコむというコンビは多いが、笑い飯は2人が交代しながら順番にボケ役に回るというスタイルを生み出した。面白さを競っているように見えるボケ合戦は、見る者に衝撃と爆笑を与えた。
高倉
ザ・パーフェクトも今までにないスタイルを作りましたよね。ツッコミというか、ボケを伝える伝道師の役割ですね(笑)。
嶋田
ピンボケたろうさんのキョトンとした表情が、解説役にぴったり合っていますよね。

ハードパンチャー妹尾さんの突拍子もない奇想天外なボケを、相方のピンボケたろうさんが、必死に理解しながらわかりやすく解説してくれる。まだ結成して3年という彼らだが、この新しい漫才のスタイルに評価が集まった。
金沢
ウーマンの村本さんのボケはあれだけ早口なのにちゃんと聞き取れるのがすごい。
長峰
首を小刻みに動かしてリズムを取っているようにも見えます。
高倉
拍手が起きるボケですね。もう匠の技の域だと思います。
長峰
普通、漫才で早口取り入れるって発想ないですよね。漫才師はかんだら終わり。怖いですよ。

言葉だけで笑わせる漫才師にとって、セリフをかむことは御法度。しかし、ウーマンラッシュアワーの村本さんは、かむことを恐れず、とにかく早口でボケまくる。長いセリフを驚くほど速く、しかもかまずにまくしたてる技術は、もはや神業といえる。
長尾
和牛の川西さんの「もうええわ!」も、なるべく多くの言葉を詰めたい漫才で、あえてためるという。
長峰
関西で一番かっこいい「もうええわ!」と言う人といわれてます。

漫才の締めの言葉である「もうええわ!」。コンビの数だけ「もうええわ!」のスタイルが存在するが、和牛・川西さんのそれはたっぷりと間を置いた、渋めの声が特徴。その声と表情がかっこいいと、女性芸人からの評価も高かった。
嶋田
僕は山口出身なんですけど、千鳥のノブさんを見て「中国地方の方言でも漫才できるんだ」と思って芸人を目指したんです。
金沢
ノブさんはツッコミに人柄が出てますよね。「この人絶対いい人そう」っていう(笑)。
高倉
げんこつでグッと頭をこするツッコミも新しかった。

一般的なツッコミとは一味違う、悲しそうな顔で心の声が漏れたようなノブさんの「嘆き」が印象的。独特の岡山弁での嘆きに思わず笑ってしまう大悟さんの姿もよく見られる。「クセがスゴイ!」は2016年のお笑い界流行語大賞といえるだろう。
金沢
サンドの富澤さんのボケは普段誰でも使えそうなフレーズが、もう富澤さんのものになっている。
嶋田
実は、万能なフレーズなんですよね。どんなネタでも使えて面白い。もう富澤さんのものですが……。

漫才の途中、絶妙なタイミングととぼけた表情で発せられる富澤さんの「ちょっと何言ってるかわかんない」というセリフ。「これ自体がボケになるというのが新しかった」「富澤さんが言うからこそ面白いセリフ」という声が多く上がった。
長尾
そういうの欲しいですよね。
高倉
やっぱり、見たことのない新しいスタイルの漫才は、印象に残りますね。
長尾
僕らもそういう漫才を作っていきたいですね!