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珍奇植物栽培マニュアル 〜多肉植物(夏型)/サボテン編〜

世界の果てからやってきて、ユニークな姿と生態で人々を魅了する珍奇植物。それをマンションのベランダなどで育てるコツを、その道のプロに尋ねた虎の巻。自生地の厳しい自然環境が生んだ珍奇な姿を、本来の魅力ある姿のままで育てるために。


初出:BRUTUS No.896「新・珍奇植物」(2019年7月1日発売)

photo: Natsumi Kakuto, Junzo Hongo, Takayuki Haneta, Tetsuya Ito, Koh Akazawa / illustration: Shinji Abe / text: Hideo Seo / cooperation: Nakato orchids, Hana-uchu, NEPETHICA, Exotie Plants, Border Break!!

監修/藤川史雄(スピーシーズナーサリー)

多肉植物/サボテン

夏型の多肉植物とは、春から秋にかけて生長し、冬に休眠する性質を持つもの。自生地はマダガスカル、中南米(主にメキシコ)、熱帯アフリカなど。この中でも高山に自生するものは、冬型多肉植物の扱いにすることもある。基本的には屋外で育て、冬は室内で管理する。サボテンも基本的には、夏型の多肉植物と同様に扱う。

point

・春に根を張らせて、一気に育てる。
・夏型といえども、真夏には生長が鈍る。
・鉢は株に合わせて、小さめのものを選ぶ。

多肉

サボテン

How To

日照

春と秋は通風の良い屋外で、存分に日に当てる。夏は遮光ネットで30%程度の遮光を。これは梅雨空に慣れた植物が、突然強光に当たって焼けるのを防ぐため。南向きのベランダでは、壁沿いの日陰になる場所に。

なお、臥牛など地表近くで葉を展開するガステリア(ラウリンソニーなど、株が立ち上がり日当たりを好む種は除く)や、暑さがやや苦手なエケベリアなどは、遮光性を高くするなどして、光を弱めにするとよい。

水やり

鉢底の穴から水が流れ出るまで与えるのが基本。生長期は表土が乾いた日数×2の間隔を空けて灌水(かんすい)する。これはケープバルブやコーデックス、グラウンドブロメリアでも同様で、慣れない間はこのリズムに準ずるとよい。

ただし、上級者なら生長期、水を切らさずにやってもよい。その場合も、中途半端に灌水して腐らせることを防ぐため、鉢底から水が出るまで与え、鉢内に新鮮な空気を行き渡らせる基本を徹底すること。

生長期の初頭(3月中旬頃)と、休眠期へ移行する頃(11月中旬〜下旬)は、水やりの回数をやや控えめに。特に春先、根が少ししか出ていない時に灌水しすぎると腐る可能性も。休眠期は完全断水もしくは月に1回の灌水でよい。

冬越し

霜が降りる前に、室内に取り込むのがベター。目安は最低気温が5℃を切る頃。置く場所は、日の当たる窓辺など。窓辺で外気の影響を受け、夜0℃まで下がる場所でも、日中20℃くらいまで上がる方が、常に5℃くらいの日陰に置くより冬越ししやすくなる。

なお冬季、灌水のペースを落とすのは、そうすることで植物が内包する水分が濃くなり、耐寒性が高まるため。この時期は無理に育てようとしないこと。育てるのではなく、寝かせるという意識を持つとよい。

また、室内でも空気が動く環境を作ってあげるのが、株を間延びさせないコツ。サーキュレーターが最適だが、ほかの観葉植物と異なり、多肉植物はエアコンの風が当たっても問題ない。ただし、温風ヒーターの風はNG。

春、屋外管理に戻す時期は3月中旬〜下旬頃。なお寒さが気になる場合は居住する地域で八重桜の花が散る頃(5月上旬〜中旬頃)まで室内管理にしておけば、突発的な遅霜に当たる被害も避けられる。

植え替え

生長期の前、3月上旬〜中旬頃にやるのがベストだが、6月頃までなら問題ない。真夏は植え替えを避けるが、9月にも行ってよい。

株を鉢から抜いたら、根から土をすべて落として、スカスカになった根を外す。この時、病害虫がいたらふるい落とす。根詰まりを防ぐため、根が伸びすぎている場合は、長さを調整。サボテンは根を短めに切ってもよいが、多肉植物は鉢に収まりきらない分を切る程度に。

早く育てたい場合は毎年植え替えをしてもよいが、大きな株は2〜3年に1度程度にとどめておくとよい。

用土

目安は赤玉土7、鹿沼土1、軽石1、堆肥質0.5、パーライト0.5の割合。毎年植え替えない場合は、赤玉土や鹿沼土を硬質のものにするとよい。安価なものは灌水するうちに砕けて泥状になり、通気性が悪くなるため。あらかじめ配合された多肉用の培養土を用いてもよい。

用土の割合を表したチャート

PLUS ONE:西日と多肉、その独特特異な相関関係

先にも述べたが、多肉植物を西日に当ててじっくりと育てると、自生地に生えていた時のように詰まった株が出来上がり、発色も良くなる。一般的な観葉植物と見た目が異なるだけでなく、育成法が特殊なことも多肉の魅力だ。

多肉植物のイラスト

栽培カレンダー