『19番目のカルテ徳重晃の問診』富士屋カツヒト/医療原案 川下剛史/著
推薦者:近西良昌
病院で紡がれる、医療従事者と患者の人間模様。
医療を扱ったマンガはとても増えています。現在の情勢でも医療従事者が話題に上がる場面が多々あり、医療への関心が高まっていると感じます。
今まで医療マンガというと、超絶テクニックを使って手術を成功させる先生や、特定の診療科などピンポイントなテーマで描かれることが多かったと思いますが、こちらの作品の舞台は、総合診療の現場。総合診療のお医者さんは、患者さんとコミュニケーションを取る中で、すべての症状を判断しなければならず幅広い知識が必要とされます。
ストーリーの中では、見逃してはいけない病気のサインをどのように見つけて治療するかも細かく描かれていて、それを知っていたらのちのち役に立つこともあるかもしれません。
『素直なカラダ』東野柚子/著
推薦者:兎来栄寿
東洋医学の「未病」から不調の原因を探る。
薬や手術で治るものならそれでいいのですが、日頃から頭痛や腰痛に悩まされているという方もいるかと思います。これらの多くは現代の西洋医学をもってしても「原因不明」。
そして健康か病気かで言うと健康の方に分類されてしまいます。一方、東洋医学では健康と病気の間に「未病」という状態があり、未病時の原因不明の体調不良に対して心身のバランスを整えて治そうというアプローチを取ります。漢方や鍼灸などは疑わしいという人もいるかもしれませんが、読むとその精髄に触れられる珍しい作品です。
あなたの体調不良ももしかしたら東洋医学的な手法で改善できる部分があるかもしれません。良い部分は取り入れて日々の健康増進に役立てるといいでしょう。
『オリオリスープ』綿貫芳子/著
推薦者:トミヤマユキコ
明日からでも始められる!スープで健康。
健康への道は自炊から。コロナ禍で自炊をするようになった方も多いと思うんですが、一鍋で完結するスープから始めてみては?という気持ちでこのマンガを選びました。
主人公の原田織ヱはスープに目がないんですが、スープといっても解釈の幅がかなり広い。「ぜんざい」や「梅酒」も登場しますし、要は四季折折の素材で作る汁物全般なので、読んでいて全く飽きません。基本的に仕事場のキッチンで作業するので、シンプルなレシピばかりなのもありがたいし、何よりすごくおいしそう。
1巻で「あなたにとってスープとは?」と聞かれた織ヱが「ホッとする」と答えるんですが、この言葉にすべてが詰まっていて。心身ともに漢方薬のように効くマンガです。
『うつ病九段』先崎 学/原作 河井克夫/著
推薦者:ブルボン小林
「必ずなおる」というメッセージが力強く響く。
将棋の棋士がうつ病で入院し、立ち直るまでのことだけがシンプルに描かれている。当事者以外にはなぜ苦しいのか分からない、不思議な脳の病気(こころの病気ではなく脳の病気だと繰り返される)の様子が、河井克夫のうつろな絵の力で見事に炙り出される。
本当に絵がすごい。ホームから電車に飛び込むイメージ、溺れるイメージなどがスパスパと畳みかけられるとむしろ一瞬、暗い考えに引っ張られそうにさえなる。覚悟を持ってめくるべきともいえる。
健康な人間も常に鬱と隣り合っていると分かり戦慄もするし「必ずなおる」というメッセージが随所で力強く響き、勇気づけられもする。最後は大冒険譚を読んだみたいに胸が震える。