愛するものを守るため、取り戻すために。「愛って戦い」な映画20選
愛に戦いはつきものだ。愛するものを守るため、取り戻すために人は戦い、愛し合っていたはずの2人もいつの間にかすれ違い、傷つけ合ってしまう。その思いが強ければ強いほど、ぶつかり合いは激しくなり、彼らの行動は胸を打つ。
illustration: Yoshimi Hatori / text: Satoshi Furuya
「戦う女性」キャラクターの最高峰
ハードボイルドな魅力が炸裂するジーナ・ローランズを堪能できる珠玉の一作。マフィアに家族を殺された少年を守るために組織と戦う彼女の一挙手一投足にとにかく痺(しび)れる。タフで、クールで、愛に満ちた「戦う女性」といえばグロリアの右に出る者なし。
美しき兄弟による美しき愛の物語
障害がある弟を守るため、周りの偏見や社会と闘う、献身的な兄の姿が胸を打つ。兄を演じた、純真無垢な人間を演じさせたらピカイチのジョニー・デップをさらに超えるイノセンスを放つ弟役のレオナルド・ディカプリオによる奇跡的名演によって兄弟愛がきらめく。
「守る・守られる」ではなく「共に戦う」愛
弱い者は強い者が守る。一つの愛の形だ。だが、弱い者が「守られること」ではなく、「共に戦うこと」を望んだ時、戦う術(すべ)を教え、共に命を懸けることも、また一つの大きな愛情だ。根無草で孤独な2人、レオンとマチルダは、共にあることで愛を育む。
飲んだくれの父親が最期に見せた家族愛
「ガキたちに愛していると伝えてくれ」と残し、宇宙船に特攻するパイロット。家族愛と自己犠牲を描きながらも、突っ込む瞬間の「ようタコ野郎!帰ってきたぜぇ~」と威勢が良すぎるセリフのおかげで、自己犠牲の美化をギリギリ抑えた爽やかな名シーンである。
史上最悪の場所でなされる人生最大の嘘と愛
強制収容所へと連れてこられた父と幼い息子。息子を心配させまいと、父は収容所の生活はゲームで、点数を稼げば戦車がもらえると嘘をつく。史上最悪の収容所を子供の遊び場へと作り変える、その大胆不敵な力技を可能にしたのは父のユーモアと愛である。
娘への愛は閃光となって地球へと降り注ぐ
地球を守るため、将来の義理の息子の代わりに、自らの命を犠牲にして星と自爆する父は、他の追随を許さぬほどヒロイックに描かれる。また、星の爆発に合わせて愛する娘との思い出が炸裂するシーンからもわかるように、父の娘に対する愛は宇宙規模に壮大なのだ。
父娘の戦いは、観客の心に純愛を宿す
7歳程度の知的年齢の父親サムと、7歳になった娘のルーシー。本作は愛し合う父娘が、この世の残酷な不条理と戦う物語。ピュアな愛情だけでは乗り越えられない現実と戦う父娘を見て、周囲の人々の心にも、そして私たち観客の心にも、次第に純愛が宿っていく。
純真な愛のための、無慈悲なバイオレンス
人は愛のために戦い、愛のために殺す。愛が戦いの原動力になる時、どこまでも残酷になれる人間がいる。流血や悲鳴、銃声が過剰に響き渡ったあとに取り残された悲しさは、皮肉にも愛を美しく尊くもする。血塗られた男による、悲しき愛のバイオレンス。
揺るぎない2つの愛が導く避けられない戦い
マフィアのサリヴァンは、妻と息子を仲間に殺される。愛する家族を殺された恨みを晴らすべく、愛するファミリーを始末する戦いの旅に出る。肉親同然のファミリー殺しを躊躇(ちゅうちょ)させるのも愛だが、愛するファミリーに銃口を向ける理由もまた、妻と息子への愛なのである。
愛する者のために逃げる父と戦う息子
宇宙人から我が子を守るため、逃げることに全振りしたトム・クルーズの身体能力がすさまじい。愛すれば愛するほど、トムは弾丸のように強く、素早く、野蛮になっていく。そして強く掴(つか)めば掴むほど離れていく息子の存在は、愛することの難しさも同時に示している。
父と母。家族を守るそれぞれの戦い
時は大恐慌時代。地位や名誉のためでなく、家族の元へミルクを持って帰るために戦う極貧のボクサーは、同じく貧困にあえぐ人々の希望にもなっていく。そんな彼ら男たちの陰に隠れながらも、家族を守るために戦った女たちの姿もまた、凜々しく誇り高い。
愛する娘のために修羅と化すパパ
なにかと我が子を誘拐されがちなパパといったらリーアム・ニーソンだが、愛する娘を救うべく怒りに震える本作の暴れっぷりは特にすごい。娘のためなら、まったく関係のない元同僚の妻さえも躊躇なく撃ち抜くさまはまさに修羅。世界最強のパパがここにいる。
好成績じゃなくていい。愛する者のための舞
心に傷を負った男女が出会い、自分たちを立ち直らせるため、ダンス大会に出場する。周りはプロ級だが、彼らはおじけづかず、ただお互いを信じて踊る。良い点数を取ることや相手に勝つことは問題じゃない。ただ愛する自分のため、そして愛する人々のために戦うのだ。
曖昧で単純な愛のセッション
恋人でもなく、かといって単なる友人でもない曖昧な男女が肉体をぶつけ合う。取っ組み合いにも、セックスにも、あるいはダンスのようにも見えるそのバトルは、愛のただならなさを、2人の関係の曖昧さとは裏腹に極めてシンプルに、力強く描き出している。
愛は時空を超越し、人類を絶滅の危機から救う
世界が今にも終わろうかという日に、宇宙という超常的な存在に戦いを挑んだ男。彼が命を懸けて無謀な戦いに出たのは、愛する子供たちの未来のためだった。「愛は観察可能な力よ。何か意味がある」という劇中のセリフ通り、本作のカメラは愛を見つめ続ける。
愛が人間を奮い立たせ、立ち上がる勇気をくれる
7年間監禁されていた過去を持つジョイは、マスコミの心ない言葉により、自殺未遂を起こす。生きることを投げ出そうとした彼女が、再び立ち上がれたのは、愛する息子がパワーを分けてくれたからだった。愛は、人生という戦場で戦い、生き抜く勇気をくれる。
誰よりも愛しているのに戦わなければならない
愛し合っていたはずの夫婦が離婚調停をすることになる。法に則(のっと)った戦いには、気持ちの良い勝利などなく、両者ともに傷を負い消耗していく。調停という戦いを終えたラスト、「矛盾しているけどずっと愛するだろう」というセリフは、愛することの謎に迫った名言。
命懸けの戦闘が2人の愛をより強固にする
今は亡き相棒の息子ルースターと同じ編隊で戦うことになったマーヴェリック。かつては因縁のあった2人だが、命令に背いてでも、お互いを庇い、鼓舞し、喧嘩をする。その姿はまるで親子そのものだ。同じ戦場で戦った経験が、彼らの愛を揺るぎないものに変えたのだ。
いつでもどこでも起こっている親子喧嘩と愛の物語
マルチバースにカンフーにと、前代未聞のスケールで贈る、壮大な親子喧嘩。ただし、実際の問題は、どこの家庭にも起こっていそうな母と娘の軋轢(あつれき)であるところがキモ。愛ゆえに母は娘を否定し、娘は母に自分を認めろと激しくぶつかり合う。
つまらないやつとの友情の終わらせ方
友情の終わりは唐突だ。とある孤島で、仲の良かった中年男と老人男性との絶縁バトルが勃発する。なぜ老人から絶縁を言い渡されるのか、中年男にはわからない。知ろうとすればするほど嫌われる。このわからなさに友情とその困難さが苦しいほどに描かれる。