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写真家・平野太呂が水族館に通う理由。「川について考えるきっかけをくれるから」

かわいくて、不思議で、面白い、生き物たちの魅力が詰まった水族館に魅せられる人が急増中。海や川の生き物を愛し、水族館に通う写真家・平野太呂さんの、楽しみ方や時間の過ごし方を聞いてみた。

text & edit: Yuriko Kobayashi

“奇跡の魚”の数奇な運命を知る

川や湖で釣りをする僕にとって、淡水魚を展示する水族館は実際に釣りをする川や、そこに暮らす魚について知る場所と言うのかな、“答え合わせ”をするような感覚で足を運ぶことが多いです。魚が泳いでいる様子を横から見られたり、水底の様子が再現されていたり、その川に生息する魚がどんな環境にいるのかを観察できるのがいいですね。

興味深かったのは秋田県にある〈田沢湖クニマス未来館〉と、山梨県の〈クニマス展示館〉。クニマスは世界で唯一、田沢湖だけに生息する固有種でしたが、1940年に灌漑(かんがい)と水力発電のために酸性度の高い川を流入させたことで絶滅しました。

ところが2010年、かつて山梨県の西湖に移植した卵が育ち、命をつないでいたことがわかったのです。両館では「奇跡の魚」といわれるクニマスが見られますが、同時に人間の都合によって左右されてきたその歴史も知ることができます。人の暮らしに深く関わる川という環境、それをどう守っていくかについて考えるきっかけをくれる施設は、大切な存在だなと思います。

山梨〈クニマス展示館〉