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ブラジル音楽を掘り下げられる、渋谷〈Bar Blen blen blen〉。坂東祐大とリスニングバーへ

なぜ人は、リスニングバーに行くのか。旨い酒と洗練されたその選曲は、愛聴盤を新鮮に響かせ、新しく出会った一枚も名盤のように聴かせてくれる。店を信頼するゲストと店主が語る、音楽と酒の話。

Photo: Kenya Abe / Text: Chisa Nishinoiri

濃厚なブラジル音楽と
蒸留酒に溺れる夜

『大豆田とわ子と三人の元夫』から『竜とそばかすの姫』まで話題作の劇伴を次々に手がける作曲家・坂東祐大さん。藝大で作曲を学んだ彼が今掘り下げたいのが、ブラジル音楽。

「気になるミュージシャンがちらほらいるのに、あまりに広すぎて掘りそびれていて。僕にとって未開の音楽なので、今日はすごく楽しみ」

訪れたのは渋谷の〈バー ブレンブレンブレン〉。
「サンバ、ボサノヴァだけじゃないんです。例えば、内陸部のミナス・ジェライス州では70年代から“クルビ・ダ・エスキーナ”という音楽集団によって内省的で美しい音楽の潮流が生み出された。

ミナス出身のシンガーソングライター、フラヴィオ・ヴェントゥリーニもその一人。彼らの音楽には総じて歌心がある」と、ブラジル&ブラックミュージックを愛する店主の宿口豪さん。まずは聴くのが一番、とオススメの盤がかかる。

「音が立体的というか、空間の把握感が心地よい。彼らの音楽が持つ多様性はやはり多民族国家の影響かな。親しみのあるメロディと歌心はどこかJ−POPに通じるものも感じます」

〈バー ブレンブレンブレン〉店内

「最近はブラックミュージックやヒップホップの影響も色濃いですが、どんなにアメリカナイズされても隠せないサンバ感が出ちゃうのがブラジル音楽のいいところ(笑)」と、宿口さんも応える。ここで坂東さん、ブラジルの国民酒カシャッサ(サトウキビ原料の蒸留酒)をちびり。

「これほどアイデンティティを失わず、自国の意志を持った音楽は世界中でも稀。やはりブラジル音楽、奥が深い!この強い蒸留酒とのセットで濃密な夜が過ごせそうですね」

対談中に流れたアルバム4枚

『Nascente』Flávio Venturini
『Móbile』Paulinho Moska
『Slow Motion Bossa Nova』Celso Fonseca & Ronaldo Bastos
『Melhor Momento』Walmir Borges