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公開から20年、『リンダ リンダ リンダ』はなぜ色褪せないのか?山下監督とゆっきゅんが語る

2005年の公開から20年を経て、今なお青春映画の名作として愛され続ける、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』。公開当時から多くの観客の支持を集めていたが、その中にはまだ10歳ながらも、初めて地元・岡山県のミニシアターに足を踏み入れたDIVAのゆっきゅんがいた。

photo: Satoko Imazu / text: Yusuke Monma / edit: Emi Fukushima

2000年代を代表する青春映画が20周年を記念して4Kリバイバル公開

山下敦弘

10歳の時に観てるんですか?しかも自分で選んで?

ゆっきゅん

そうなんです。どこで知ったのかはちょっと思い出せないんですけど、自分で選んで、母親を連れていって(笑)。それをきっかけにミニシアターに行くようになりました。

山下

自分がもし10歳でこれを観たら、相当背伸びして観てる感じだと思うんです。5、6年後になって、やっと良さがわかるっていう。

ゆっきゅん

背伸びしなくても、すごく面白かったですよ。10歳の時の感想ははっきり覚えてないんですけど、改めて考えると、自分はこれまで女性同士の友情を描いた作品ばかり好んで観てきたなって。

山下

映画『下妻物語』も好きなんですよね?

ゆっきゅん

『下妻』とか、ドラマなら『すいか』とかですね。自分が歌う時も、友情について歌うことが多いんです。何でも話せる相手や大切で仕方ないたった一人の友人について。でも友情って、そういう親密な関係だけじゃない。『リンダ リンダ リンダ』を今回観直して、文化祭のライブのために集まった4人が、すごく仲が良いというわけでもなく、本番に向けて時間を過ごす中で友情を育んでいく、その関係性がすごくいいなと思いました。

山下

作ってる時は、友情なんて1ミリも考えてなかったんですよ。最初の企画は、ブルーハーツをコピーする女子高生バンドのコンテストもので、撮るのが難しいなって。それを自分がやりたい方に引き寄せて、バンドバトルはなしとか、ドラマティックな場面を全部外していった。その結果、純度の高いものが残った気がするんです。

ゆっきゅん

青春らしい要素を抜いていったのに、実はキラキラしたものが残ってたみたいな。4人の佇まいも、映画としての視点も、熱くないんですよね。カメラは顔に全然寄らないし。

山下

それはある種、偶然の産物というか、僕がカットを割れなかっただけで(笑)。

ゆっきゅん

4人がいて、緩んだ時間が映っていて、その空気が主役みたいな感じがあると思います。深夜の学校の屋上で4人が話すところは、すごく好きなシーンですけど、観る側にはかけがえのない時間に見えるのに、4人はそれに気づいてない。

山下

ストレートな青春っぽさが照れくさくて、それもそぎ落としていったんですよ。正解かどうかもわからずに。

ゆっきゅん

じゃあいつ頃、正解だと思ったんですか?

山下

最近?(笑)自分はひねくれてるので、作った直後はやっぱり恥ずかしかったんです。でも時間が経って、もう他人事(ひとごと)っぽくなったというか、10周年の時にフィルムで観たら普通に感動して。

ゆっきゅん

ああ、いい話。

山下

単に年をとって、青春ものに弱くなっただけかもしれないけど(笑)。でもこの映画を鏡にして、その時の自分自身が映るような作品になったのかもしれません。

ゆっきゅん

観客にとっても、そうですよね。どう感じてほしいのか、映画が固定してないから──。

山下

誘導してないですからね。

ゆっきゅん

だからこそ、観る時の年齢によって見えるものが違うのかもしれない。

山下

ブルーハーツを演奏するというエモーショナルな瞬間はあるにせよ、実は単なる女子高生の観察日記なんです。それが生命力が強く、息の長い映画になった要因なのかなっていう気もします。

ゆっきゅん

ブルーハーツの価値も不変ですしね。

山下

ね?

左から山下敦弘監督、ゆっきゅん
『リンダ リンダ リンダ 4K』
監督:山下敦弘/出演:ペ・ドゥナ、前田亜季ほか/韓国からの留学生を加えた女子高生バンドは文化祭に向けてザ・ブルーハーツのコピーに励むが……。4Kデジタルリマスター版で公開。8月22日、新宿ピカデリーほかで全国公開。