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パリメンズ雑誌『l'étiquette』編集長・ゴーティエ・ボルサレロを紐解く

世界中から注目されるパリのメンズファッション誌『l'étiquette Magazine』が今年発売した特別号を、もう読みましたか?ジャケット、シャツ、シューズ、アクセサリーなど、彼らの考える必需品を100に絞り切り、紹介していて、パリの感性がわかる、とびきりの一号なのです。そんな『l’étiquette Magazine』の共同編集長を務めるゴーティエ・ボルサレロの『ブルータス』での最新&過去のインタビューから紐解く、かっこいい大人とは、トラッドとは。

photo: Mari Shimmura, WATARU (portrait), Satoshi Nagare (magazine) / text: Chisa Nishinoiri, Naoto Matsumura, Asuka Ochi / coordination: Masae Takanaka / edit: Naoko Sasaki

かっこいい大人とは?

Q

かっこいい大人とは?

A

自分をよく知り、自分という人間の社会的背景、年齢、出身、仕事などと調和する、一貫性を持った服装をすることです。決して着飾らないこと、上質な服を買うこと、そして、愛着を持って着古していくこと。

Q

個人的な必需品ベスト5は?

A

リーバイス505、白Tシャツ、ロレックス サブマリーナ ノンデイト、〈オールデン〉のコードバンローファー、銀ボタンの黒のブレザー。

Q

興味のあるスタイルや文化は?

A

メタル音楽、90年代のスケートボード、モノクロームのテーラリング。

Q

エフォートレス、トラディショナル、シックが3人のスタイルの基本ですか?

A

そうであってほしいですね。

ブルータス970号『GOOD STYLE for Mr.BRUTUS かっこいい大人を作る。』では、『l'étiquette』共同編集長・マーク・ボウジェ、バジル・カディリのインタビューも掲載中。

トラッドとの出会い、魅力について

ブルータス958号『Fashion and Emotions 感情で、服を着る。』掲載

Q

トラッドとの出会いについて。影響を受けたブランドやカルチャーを教えてください。

A

子供の頃、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のレオナルド・ディカプリオに憧れて、60年代のアメリカの服を古着屋に探しに行ったのがきっかけでアイビーやプレッピーが好きになりました。

伝統を重んじるカトリックの家庭で育った私の価値観からそれほど離れていませんが、少しだけセクシーなスタイルでした。

コスプレにならないように、フルアイテムでは着ないようにしています。100%アメリカンなスタイルに見えるのは嫌なんです。

Q

トラッドの魅力とはどんなところでしょうか。

A

英国のクラシックをルーツとし、時代を超えた上質なアイテムで構成され、どこかエフォートレスなシックさを持ち、時を経てより美しく見えるところ。

完璧なものであってはならず、そうでなければ、コスチューム的で退屈なものになってしまいます。また、父親から譲り受けた襟がほころびたシャツや穴の開いたセーターを着るのも味わいがあっていい。そこに文化的な豊かさを感じます。

Q

今の時代におけるトラッドとは。それを象徴するブランドやカルチャーは?

A

伝統という概念が失われつつあるのではと危惧しています。高価な服を着ている、レアなスニーカーを履いている、といったことが重要視され、文化や職人の技に惹かれるクールな人たちを見るのは難しい。

一方でパリのショップ〈Beige Habilleur〉の仕事はまさに現代のトラッドだと言えるでしょう。過去の引用だけではなくモダンでグラムールな方法でアップデートした新しい試みです。

Q

時代を経てもなお変わらないルールはどんなことだと思いますか。

A

クオリティ(品質)の高さです。

彼のいつもの朝ごはん

ブルータス920号『最高の朝食を。』掲載

パリで最も美しいカフェで
友人が淹れる一杯のエスプレッソから一日が始まる

ここは〈クラヴァン〉というエクトール・ギマールが1910年代に建築したパリで一番美しいカフェ。内装も当時のままで、歴史的にも価値のある建造物なんだ。現オーナーのフランクは僕の友人で、彼は有名レストラン〈ル・シャトーブリアン〉と、〈ル・ドーファン〉の経営者でもあった。

ゴーチェ・ ボルサレロさん

いつも僕は朝8時半に子供をベビーシッターに預け、アトリエの近所にあるここを訪れる。カウンターに座って頼む朝食は、決まってエスプレッソだけ。アメリカンに比べてカフェインがゆっくり吸収されるから心拍数も上がりにくいといわれている。

フレッシュジュースやスムージーを飲む人もいるけど、僕は胃が痛くなるから苦手で……。友人のフランクとたわいもない話をしながら飲むひとときが、頭と体を家庭から仕事へと切り替えてくれるんだ。パリもようやく飲食店の営業が再開し始め、久しぶりにフランクのエスプレッソを飲んだけど、やっぱり身が引き締まるよ。フランスでランチのことをdéjeuner(デジュネ)というんだけど、これは“断食をやめる”というのが語源。

フランスには、朝はしっかり食べない方が健康に良いという考え方があるんだ。クロワッサンを食べるイメージがあるだろうけど、意外にそういう人は少ないんだ。でも、たまにフランクの作る目玉焼きを食べる時があってね。これが時にはしっかり食べたくなるほどおいしいんだよ(笑)。