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“日本の芸術界のため”に西洋美術を蒐集。大原孫三郎のコレクションから始まった、岡山〈大原美術館〉

印象派の名作から人気の江戸絵画や国宝の茶碗まで。何度見ても心が満たされる名品の背景には、美術を愛し日本の文化向上を願った伝説の蒐集家(しゅうしゅうか)たちの思いがあった。その膨大なコレクションから始まった大原美術館を紹介する。

text & edit: Masae Wako

親友とともに蒐集した、西洋美術を公開するために

大原美術館(岡山/倉敷市)

倉敷の事業家で日本美術のコレクターでもあった大原孫三郎が、1930年に設立。日本で最初にできた西洋美術中心の私立美術館だ。世界的名画が並ぶ本館や、民藝の陶芸や版画が並ぶ工芸・東洋館を、倉敷旅の行きつけに挙げる人も多い。

そんな館が生まれたきっかけは、岡山出身の画家・児島虎次郎(1881~1929年)。大原の薦めで渡欧した児島は、現地で制作に励む一方、「日本の芸術界のために」と作品蒐集を思い立つ。大原の協力のもと、何度かの渡欧でモネ、マティス、エル・グレコらの作品を集めた児島だったが、その後47歳で逝去。

早すぎる死を悼んだ大原は翌年、児島が集めた作品と児島自身の作品を公開するために美術館を開いた。「今を生きる人々にとって意義あることを」という2人の願いは、今も館に息づいている。