服部昌孝(スタイリスト)
革靴=堅苦しいは、勝手なイメージなだけ。
「自由に服との相性を楽しむ」という服部さんの靴選びに教科書的なルールは一切なし。ひとクセあるデザインをどう取り入れるか、そこに哲学がある。
「考えているのは、全身のバランス。一般的に、革靴=ドレスアップという位置づけだけど、僕にとってはドレスダウンにもカジュアルアップにも使えるもの。〈ダナー〉のタフなマウンテンブーツを、上品に真っ白でアップデートした〈サルバム〉の別注モデルは、まさにそれ。
スニーカーでは出せない品があり、老舗の革靴にはない遊びがある。唯一無二な一足に出会うとつい手を出してしまうのは、新しいスタイリングが切り開けそうだから。先入観を取っ払った先にファッション本来の楽しさがある」
長山一樹(フォトグラファー)
履き続けると、わかることがある。
“今日、何をするか”に応じてオーダースーツを選び、革靴を決める、長山さんのルーティン。たとえ、山中でのロケ撮影でもこのスタイルを崩さない。
「これが習慣化して5年。オケージョンに合わせた細分化が進んできました。例えば、砂浜でのロケには、〈パラブーツ〉のプレーントウ。装飾が少ないアッパーは砂がついても叩けばすぐ落ちる。窮屈で動きにくそうと思う人がいるなら、それは革靴を履き込んできていないから。
諦めず続けると、コードバンのように硬い動物の革が人間の皮との反発をやめる時が来るんです。それが馴染むということ。そうなれば、スニーカーなんて比じゃないくらいラク。シワの数が、自分だけのスタイルの証しなんです」
山岸慎平(〈BED j.w. FORD〉デザイナー)
色が変われば、スタイルが広がる。
「ソールまで、真っ黒でないと落ちつかない」とブラックシューズへの一途な思いを貫いてきた山岸さん。ただ、そんな気分にも変化の兆しが……。
「好みのものを見つけたらそればかり。革靴も同じ。色は決まってブラック。普段は爪先が尖ったウエスタンシューズで、作業日なんかはスニーカー感覚でブーツを選びます。
そんな中、最近好みとは真逆の〈ドリス ヴァン ノッテン〉のUチップシューズに惹かれたんです。茶色で幅広いフォルムと、根本的に好みの要素はゼロのはずなのに、心に刺さりました。まだはっきりとはわかりませんが、その理由を知ることで新たな価値観が生まれる気がしています。革靴って、そんな発見があるのも面白い」