ランブレッタに魅せられたScootelistたち
モッズ文化の起源は1950年代末のイギリスにある。当時の英国は戦後の復興期から続く好況で、労働者階級は趣味や余暇にお金をかけるように。そうして大衆文化が醸成。伝統的な文化や社会構造に変化が起こり、若者たちを中心にモッズが生まれていった。
細身のスーツにM-51を羽織り、クラブ遊びに興じるモダニストたちを語るうえで、欠かすことのできないスクーター。ランブレッタやベスパの車体をベースに、ド派手なデコレーションを施した彼らの愛車は、やがてムーブメントとなり、世界へ波及していった。
そして80年代に突入すると、その波は東京にも押し寄せる。現在まで続く、モッズスクータークラブ〈The NUMBERS!〉のREIさんもモッズカルチャーに魅せられた一人だ。
「1960年代のイギリスを舞台にした映画『さらば青春の光』が79年に公開され、リバイバルとして世界でネオ・モッズブームが加速。イギリスのロックバンド〈ザ・ジャム〉の影響もあって80年代に入ると、東京でもモッズスクーターに乗る人が少しずつ増えていきました。そのコミュニティが徐々に広がり、今も続く日本のモッズカルチャーの祭典『MODS MAYDAY』がスタート。そうして〈The NUMBERS!〉のようなチームが各地で生まれ、モッズスクーターで集まって走る、スクーターランという文化が東京でも始まりました」
90年代後半から東京モッズシーンに関わり、今もスクーターに乗り続けているREIさん。ここまでのめり込める理由とは。
「今日こうして6台モッズスクーターが並んでいるけど、どれも全く違う仕上がりになる。そうしてオリジナリティが宿るのが面白いんですよね。フォグランプを盛って、風防を付けてなど、デコレーションにある程度のフォーマットはあるけど、細部のパーツ選びで表情は一変する。ファッションと音楽とスクーターと、好きなカルチャーをいかに自分らしく落とし込むのか。そこに終わりがないからこそ、今日までずっと楽しく走ることができているんです」
こだわりは千差万別。6通りのカスタムとは
Lambretta Li150-3(1962)× Sue
18歳の頃に買った思い出のスクーターに、今もなお乗り続けているSueさん。
「このLi150とは人生の半分以上を共に過ごしています。この3型シリーズはスリムラインと呼ばれていて、ほかのランブレッタと比べると、ボティがすっきりしています。なのでフロント、リア共にクラッシュバーを付けて、ワイドに見えるように。そうしてメリハリの効いたルックスに仕上げました」(Sue)
Lambretta Li150 Series2(1960)× 上釜一郎
上釜さんのモッズとの出会いは、中学時代に聴いたローリング・ストーンズから始まる。
「ストーンズの音楽のルーツを遡っていくと、1960年代のイギリス文化に辿り着きました。そして90年代の東京モッズを経て、現在まで休むことなく乗り続けています。オールドスクールなモッズスクーターに倣うだけでなく、いかにして現代らしさを出すか。それを考えるのが楽しいです」(上釜)
Lambretta TV175 Series3(1965)× RYOHEY
大きなフォグランプを組み合わせたひときわ目立つフロントフェイスのTV175。そこにRYOHEYさんの意図があった。
「古き良きおおらかな時代だからこそなのか、モッズスクーターの勢いに任せたデコレーションが好きなんです。なので僕のスクーターは、子供が考えたかのように、盛り盛りのフォグランプを。ボディにサビも出ているけど、それも含めておもちゃっぽさが愛おしいです」(RYOHEY)
Lambretta Li125 Series2(1961)× 赤羽元輝
ほかの車体と比べるとややミニマルなルックスだが、実はスピードに凝ったカスタムを施しているのだという。
「モッズカルチャーに触れたのは18歳の時からで、僕はモッズとレーサーのいいとこ取りを目指しています!風防やフォグランプなど、デコレーションは最低限に、中身のエンジンをボアアップしてキャブも大きく。そうしてキビキビした走りを実現させました」(赤羽)
Lambretta Li150-3(1962)× minechiyo
〈The NUMBERS!〉のSNSの発信も担当するminechiyoさん。モッズとの出会いは学生時代に観た映画にある。
「映画『ヘアスプレー』でモッズが好む音楽やカルチャーを知りました。ベスパを譲り受け、2台目に乗り始めたのがLi150。風防やフォグランプは控えめにデコレーションし、車体はモノトーンに。派手派手に作り込むのもいいけれど、今はこれくらいの仕上がりが気分ですね」(minechiyo)
Lambretta Li150-3(1962)× ERI(左)、REI(右)
タンデムで登場したREIさんとERIさん。
「1990年代のモッズカルチャーを目の当たりにし、このコミュニティで遊んでみたいと思うように。そして気がついた時には〈The NUMBERS!〉と一緒に走るようになっていました。今ではモッズがライフスタイルの一部。スクーターもファッションも、こだわりだすとキリがないけど、だからこそ飽きずにやれています」(REI)