写真家・平野太呂の人生最高のお買いもの「〈ベスパ〉のヴィンテージスクーター」

人が欲しいと思うものには、その人の価値観や人生観が表れます。何を思い切って手に入れ、何を大切にしてきたか。“お買いもの”とは究極の消費行動であると同時に、自分の人生を彩るために何が必要なのかを教えてくれるものです。写真家・平野太呂さんのベストバイ・ストーリーは?

photo: Kentaro yamada(WELLER Magazine) / text: Asuka Ochi

連載一覧へ

10代で出会い、異文化として傾倒した一台

高校時代に乗っていた現行のスモールボディのベスパから、大学生になった頃に乗り替えたヴィンテージ。工業製品のようなイメージに近づいていく前の、1960年代後半までの丸みのあるデザインが好きで、大きくて存在感のある実物を見てしまったら欲しくてたまらなかった。

当時、バイトで貯めた60万円をはたいての思い切った買い物だったけれど、手に入れたい気持ちの方が上回ってしまって。デザインは無論、60年代にイギリスのモッズたちが乗っていたのにも憧れました。

エンジン音や排気ガスのにおいも含めて、それまでの自分の世界にはない異質な文化としての衝撃は大きかった。手放してしまった今でも、チャンスがあったらまた乗りたい一台です。

〈ベスパ〉のヴィンテージスクーター
1964年製の「GS 160 MK2」。排気量160㏄で、これに乗るためにわざわざ中型免許を取得。中古で購入当時、アイボリーにペイントされたものを所有していた。photo/Kentaro Yamada (WELLER Magazine)

連載一覧へ