祇園のど真ん中、白川沿いの新門前通に開業したホテル〈THE SHINMONZEN〉。新築には見えない? 歴史ある街に馴染むミニマルな構えの佇まいは、まるで初めからそこにあった町家のようでもある。
〈THE SHINMONZEN〉はフランスのプロヴァンスにある〈ヴィラ・ラ・コスト〉の姉妹ホテルで、コンセプトのひとつに“エモーショナル・コネクション”を掲げている。つまり、より親近感のあるおもてなしを。ということで宿泊者に合ったホスピタリティを念頭にした、パーソナルサービスを心掛けるそうだ。
例えば、近くの古美術店巡りやホテル斜め前にある老舗〈菱岩〉の仕出しなど。加えて、レセプションスペースがないのも特徴だが、これはいわゆる“ホテル”ではなく友人の家のように寛いでほしい、という考えからだそう。
畳にベッド、障子にソファ、の和と洋を違和感なく調和させた部屋は全部で9室。各部屋ごとに内装は異なるが、すべての部屋のバルコニーは白川沿いで東向き、町家ひしめく祇園にあって朝日が入るところもポイントだ。
檜風呂、ウォッシュスタンドは天然の大理石で、と最大限に自然の素材を使用し、エントランスもバルコニーもバスルームもすべてバリアフリーで統一されている。
建築は安藤忠雄が、インテリアデザインはレミ・テシエが空間を演出。そして各部屋と館内にはアート作品が飾られており、定期的に入れ替えるというそのコレクションは特筆すべきもの。
ちなみに現在はダミアン・ハーストに杉本博司、ルイーズ・ブルショワ、そしてゲルハルト・リヒターなどがさりげなく、まるでリッチなコレクターの家に遊びに来たような気になってくる。
「アートホテルであり、デザインホテルであり、プリティホテルでもあります。さまざまな要素がシンプルに交ざり合ったホテルになっていると思います。これから京都のローカルに根ざしていきたい」とは総支配人のカトリーナ・ウィさん。
今夏には世界的に活躍するシェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴァンゲリスティンが手掛ける京都初のレストランがオープン予定。そして宿泊者でなくとも利用できるスイーツやパンを販売するペストリーショップの併設も計画されているそうだ。
祇園散歩の際にも、街にはんなり溶け込んだ新風、としてここは覚えておきたいところ。