ホテルとなる建物は、1930年に竣工した旧社屋であり、創業家・山内家の住居としても使用されていた既存の3棟に加え、新たに1棟が増築された3階~4階の全4棟。既存棟を含め、全体の設計監修は安藤忠雄が務めている。倉庫から発掘された木箱や調度品などが室内やラウンジなど館内の至るところで再利用され、昭和初期のモダンな和洋折衷の風情を現代に伝える、そんな“古くて新しい”魅惑の空間となっている。
館内は全18室で、東山を見渡せるテラスが付いた〈丸福樓〉スイート、安藤忠雄といえばの「住吉の長屋」を想起させる? 棟間をまたぐ部屋で露天風呂のあるジャパニーズスイート、そしてキッチンと洗濯機を備えたレジデンシャルスイートなど、それぞれ当時の内装を可能な限り活かした瀟洒なつくりとなっている。
ウェイティングルームやラウンジ、レストラン、バーはもちろん、創業家・山内家がプロデュースし、ゲーム機なども展示され任天堂の歴史に触れられるライブラリーも備えているから館内を散歩してみるのもきっと楽しいはず。ホテル+αのコンテンツが充実しているので、今後、ライブラリーでのイベントなどにも期待したいところ。
ロケーションは五条の鍵屋町、すぐそばに鴨川が流れる正面橋のそば。京都駅より徒歩約15分の、長屋が残る静かな路地に溶け込む〈丸福樓〉。言ってみれば、扉を開けると日常のリセットボタンが押され、昭和のモダンワールドへとワープ? 任天堂のホテルから京都の知られざる裏面を堪能できるかもしれない。