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わざわざ行きたくなる“普通”の町。京都・浄土寺というゴクラク 〜前編〜

最寄り駅から徒歩約25分。浄土寺にわざわざ行きたくなるのは、この場所が妙に居心地いいから。この町を形成する店、人たちは、空気感を大切にしている。互いを気にするけど干渉しないし、つるまない。京都ならではの自然体か?やけに惹かれる町なのだ。

photo: Masuhiro Machida / text: Yusuke Nakamura

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京都 浄土寺

田中美穂植物店

みんな自分が一番普通だと
思っているんじゃないですか?

「浄土寺がほかの町と比べて変わっている、とはあんまり思ってないですね。下町とかならどこでもありそうやし。店を始めた頃は、同世代の人がやるお店が少なかったこともあって、近所のお年寄りの人たちと仲良くなれたのかなと思ってます。今では、いろんなお店ができてるけど、つかず離れずな関係が心地いい場所やなと。みんな変わってるな~、私が一番普通やな~と思ってます(笑)。

もし誰かが、浄土寺のみんなでなんかやりましょうと言ったら、はーいと、今は言うと思います。仕事のやり方も年々変わってきてまして、楽しい方がいいなと。この場所でお商売ができてて、よかったなと思う今日この頃です」

浄土寺センター/ホホホ座ねどこ

自然の状態に任せる、
それができる場所。

「哲学の道が近いとか、薄い観光地要素はあるけれど、どっから見ても普通の住宅街。でも、普通であるからこそ、高齢化とか空き家問題とか、ありがちな地域の問題もゴロゴロしています。文化だのコミュニティだの言う前に、今、目の前にあるストレスを解消しないといい町にならないし、僕らも店を続けることはできないと感じている。

地域の活動を頭でっかちなプロジェクトにしてしまうと、いつか心が折れてしまう可能性もあるけれど、淡々と店を開けながら自然に取り組めている。それもいい意味での普通さだと思う。無理に町を盛り上げよう、とかではなく自然の状態に任せてるというか、それができる場所」

青おにぎり

のんびりした雰囲気。
僕はちょっと浮いてるかも(笑)。

「僕が浄土寺を選んだのは静かな川(白川)が流れていて、のんびりした雰囲気が気に入ったので。本当は鴨川が理想だったんですが、僕の中ではここも立派なリバービューレストランだと思っています。周りはみんな穏やかで優しい人ばかり。そんなのんびりな浄土寺にもかかわらず、鬼の形相でのんびり感ゼロモードで働いているのは僕ぐらいじゃないでしょうか。ちょっと浮いてるかもしれません(笑)。

浄土寺に新しいお店ができるのはありがたいですよ。今も〈ホホホ座〉から〈田中美穂植物店〉に行って最後におにぎりを買ってくれる、みたいな流れもあるだろうし。結果、おにぎり屋は得をするのです(笑)」。

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