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湯けむり大国、京都の銭湯4選。浸かるべき銭湯はどこ?

ブームといわれて久しいが、京都には銭湯文化が根づき、市内に100軒近く残る。聖地とも呼ばれる京都の銭湯について、ライターの林宏樹さんと、銭湯好き集団FROCLUBの山田政樹さんが熱く語る。

Photo: Itsumi Okayasu(ANTENNA) / Text: Daiki Mine(ANTENNA)

林宏樹

京都の銭湯を語るうえで外せないのが、ここ〈錦湯〉。
店主の長谷川泰雄さんが人をつないでくれたり、20年ほど前から音楽や落語会をはじめ様々なイベントを開くなど、銭湯とカルチャーの化学反応が起きる場所。

あるDJイベントでは200人くらいお客さんが集まって、あまりの盛り上がりに脱衣所の床が抜けてしまったという伝説もあります。

山田政樹

銭湯でやれるイベントの規模を超えていますね!
〈錦湯〉は錦市場のそばですが、繁華街のすぐ近くに銭湯があるのは、全国的に見ても貴重ですよね。

はい。祇園祭では着替え場所になるなど地域の拠点でもあり、繁華街だから色んな人が集まってくる。

山田

〈錦湯〉はお湯が熱い印象。飲みすぎた次の日や、仕事の休憩中とか、体をシャキッとさせたい時に利用しています。これだけ熱いとサウナ要らずですね。

僕はここくらい熱い湯がないと満足できない体になってしまいました(笑)。
また〈錦湯〉ではこの頭上の棚にある柳行李を修理しながら今でも使っています。籠をロッカーに入れるのは京都だけの文化ですね。籠を取り出して移動すれば一ヵ所に溜まらず着替えられるので便利。

山田

自分も昔から当たり前に使っていましたが確かに合理的です。

湯船に浸かる、ライター・林宏樹、〈FROCLUB〉PR・山田政樹

また京都の銭湯は多様性を楽しめるのも大きな特徴です。町に銭湯が一軒しかなければそこに行くしかありませんが、数多く残っているので、その日の気分で選べるのが嬉しい。

タイル絵が印象的な〈長者湯〉や、水風呂がシングル(9℃)で冷たい〈山城温泉〉。サウナ推しの〈サウナの梅湯〉とか。FROCLUBの拠点は〈白山湯〉でしたよね?

山田

はい。高辻店によく行っていて、〈白山湯〉に着ていくためのTシャツをコラボで作りたいと店主にもちかけたところから本格的にFROCLUBが始まりました。ここのサウナの温度の高さは修行です。

系列の六条店もそうですが、〈白山湯〉は水風呂が絶品ですよね。掛け流しの水の量が京都の中でもトップクラス。近辺は下水道がきれいという噂もあるほどです(笑)。

山田

京都の銭湯は地下水を使っているところがほとんどですが、中でも〈白山湯 高辻店〉は飲めるほど水質がいい。また軟水なので、ずーっと浸かっていられます。林さんはどちらに行くことが多いですか?

僕は普段、夜12時頃に行くので、深夜までやっていて熱めの深風呂と良い水風呂がある銭湯を選びます。なので〈大徳寺温泉〉や、〈門前温泉〉を選ぶことが多いです。

山田

京都は比較的遅くまでやっている銭湯も多いですよね。〈サウナの梅湯〉も深夜2時まで。あそこには20~30代の若い人が集まっている。

「若者を銭湯に」を掲げて湊三次郎君が25歳で継いだことが大きい。飲み屋も店主と近い世代が集まってきますよね。また彼は銭湯で働きたいという人に機会を提供したり、お客さんにほかの銭湯も積極的に勧めたり、まさに銭湯の伝道師です。

山田

自分も好みの銭湯を見つけると、ついシェアしたくなっちゃう。

特に若い人は2~3人の仲間で来てコミュニケーションの場として楽しんでいるシーンもよく見ます。

山田

僕たちもそうです。裸の付き合いで深い話ができたり、その場にいた知らない人と話すきっかけになる。

SNSが当たり前の世代にとって、非SNSの場は新鮮で魅力的なのではないでしょうか。また京都はほとんどの銭湯が組合に加入しているので、料金は横並びで¥450。しかもサウナも無料。この価格でこんなに楽しめるんだと若い人たちも気づき始めている気がします。

『Get湯!』という銭湯とほかのカルチャーを掛け合わせるイベントなど、未体験の人に気軽に銭湯に来てもらう試みも起こっていますしね。

山田

廃業した〈九条湯〉も建物を残してコワーケーションスペースに生まれ変わったり、場所を残そうとする新しい動きもあります。こうした銭湯が生活と密接に関わる土壌が京都にはあるんですよ。

京都らしさの詰まった銭湯4選

大黒湯(五条)

種類豊富な湯が楽しめる憩いスポット

花街・宮川町近くに位置し、舞妓さんも入浴することがある大黒湯。観光スポットも周りに多く、利用する客も幅広い。
風情溢れる脱衣所を抜けると、浴室の壁一面に描かれた壮大な山と湖の絵に、深風呂や薬湯など6つの浴槽がずらっと並ぶ。熱めの湯・サウナと水風呂で温冷浴もゆったり楽しめる。

長者湯(西陣)

外観・内装に目を奪われる老舗

大正6(1917)年創業。唐破風の屋根が残る建物は京都市の歴史的意匠建造物にも指定されている。
浴室入口上部のタイルには、男湯に雪がかかった金閣寺、女湯に桜が咲く清水寺という京都の代名詞が描かれており、建物のそこかしこに伝統ある風情が感じられる。映画『舞妓Haaaan!!!』の撮影にも使われた。

白山湯 高辻店(烏丸)

天然名水と高温サウナの名店

FROCLUBの活動拠点。天井から外光が差し込む明るい浴室と、中央に2つ並ぶ円形の浴槽が目を引く。
110℃を超える高温のサウナに、外気浴もできる露天風呂スペース、天然水が大量に掛け流しされる水風呂が人気でサウナファンが集う。飲料用にペットボトルで汲みに来る常連もいるほど水質が良い。

京乃湯(太秦)

飲食施設も充実した「NEO銭湯」

清潔感のある浴室が特徴で、広いサウナ、シャンプー、リンスにドライヤーが無料、待ち合いのロビーには漫画・雑誌がずらっと並び、時間を忘れてくつろげるサービスが充実。
極めつきはきちんとした食事処まで併設されていること。以前、居酒屋で働いていた店長が作るハイクオリティな料理やお酒を楽しむことができる。

ライター・林宏樹、〈FROCLUB〉PR・山田政樹
脱衣所の棚上段には柳行李が並び、林さんの籠を見て「いいな!」と羨ましがる山田さん。