Learn

Learn

学ぶ

知ると面白い京都文化人類学。行列に並ぶ京都人0人説、和菓子より洋菓子が無難な理由 etc.

はんなり、上品、はたまた、いけず?京都人と聞いて浮かぶこのイメージは、どこまでがリアルなんだろう。一見、不思議に映る行動や気になる風景に目を凝らしたら、京都人の最新生態が見えてきた。

illustration: Hisae Maeda / edit&text: bankto

連載一覧へ

「〇〇町まで」が通じない?

京都の路上でタクシーを拾い「〇〇町まで」と言っても通じないことがざらにある。これは京都人が南北と東西の「通り」で場所を把握しているため(四条通と河原町通の交差点は「四条河原町」というように)。目的地は通り名で、が基本だ。

前田ひさえ イラスト
街角でしょっちゅう目にする地名が書かれた「仁丹看板」。ここでも通り名の方が存在感大。

嫌みと親切の狭間は
何センチ?

家の前を掃除するときは、両隣のお宅の前までささっと綺麗にするのがルール。この「門掃き」は加減が命。きっちり自宅前だけでは自己中心的で失礼、お隣さんの前もやりすぎると汚いと言っているようでこれまた失礼、というわけだ。

前田ひさえ イラスト
お掃除の範囲は、隣との境界を30cmほど越したあたりまで、というのがこの街の暗黙の了解。

意地悪だと決めつけないで

京都の街角で車が通りにくいように置かれた「いけず石」。陰湿!……と思いきや、狭い道ですよと注意を促したり、事故の際、他人の家にぶつかることを防止したりするためともいわれている。優しさなのか意地悪なのか?真相は不明である。

前田ひさえ イラスト
この「いけず石」が原因で、京都を走るタクシーの8割が小型車両になったという都市伝説も。

合言葉は「どこ学区出身?」。
ヨソさんにはわからない小学校愛

京都人同士の会話は「どこ学区出身?」から始まる。上京区、中京区、下京区……ではなく、小学校の通学区域のことだ。10月の『区民運動会』は大人も全員参加で、全国共通行事だと思っている人も。実は京都は、国の学制に先立って学区制の小学校を設立した街。室町時代からの自治組織をもとに住民自らがお金や土地を出し合って開いたのだ。そのぶん愛着が強く、閉校した校舎も壊さず、文化施設やホテルとして形を残している。

前田ひさえ イラスト
木屋町蛸薬師に立つ元立誠小学校は、ホテルや図書館、飲食店などが入る複合施設に。実は本誌の表紙にもその姿、写っています。

生まれ変わった小学校。

・明倫小学校 → 京都芸術センター
・龍池小学校 → 京都国際マンガミュージアム
・開智小学校 → 京都市学校歴史博物館
・立誠小学校 → 立誠ガーデン ヒューリック京都
・清水小学校 → ザ・ホテル青龍 京都清水

この街の第二の主役は
学生です

10人に1人が学生の街、京都。4年で出ていく彼らが、街の新陳代謝を促している。「すぐいなくなる人には優しい」という皮肉交じりの京都人評もあるが、のびのびやってもらうことで街が元気になるのだから持ちつ持たれつともいえる。

前田ひさえ イラスト
学生ゆえのフリーダムな勢いと、経済合理性を求めているだけでは生まれない価値が魅力。*各店の詳しい営業情報はSNSでご確認ください。

学生発のお店も続々

屋根の上でも
気を使っています。

町家の屋根の上によく飾られている瓦人形の「鍾馗さん」。家の守り神として魔除けの役を担っているが、よく見ると少し斜めを向いている。これは人間関係に角を立てない京都人らしく、お向かいの家を睨まないようにとの気遣いから。

前田ひさえ イラスト
京都以外でも見かけるが、「威圧感を与えないように」と小さいものを選ぶのが京都流。

祇園祭のキュウリ、
許す許さない問題

7月に行われる八坂神社の祭礼『祇園祭』。京都ではこの1ヵ月間、断面が八坂神社の御神紋に似ているという理由から「キュウリ断ち」をする習わしがある。そのため、「キュウリの一本漬け」を売る露店に眉をひそめる京都人も多い。

前田ひさえ イラスト
御神紋を食べるなんて恐れ多い、ということか。おいしそうでも迂闊に手を出せない。

個人開催の市に見る
小商い文化の真髄

天神市や弘法市など縁日が盛んな京都だが、個人主催の小さな市も各所で開催されている。目利きである主催者が、地元で今アツいと思う出店者をキュレーション。小商い文化を背景にした京都らしいお店や作家に出会える場になっている。

前田ひさえ イラスト
オーガニックにこだわった食品が並ぶオモテ市。出店者は月替わりのため、インスタグラムを要チェック。

行列に並ぶ京都人
0人説⁉

行列嫌いといわれる京都人。時間にケチなのではなく、何事もさらりとこなすため。「今日もよう並んではるわ」と、列を作る観光客をよそ目に、馴染みの個人店には電話予約をする人が多い。その労力は厭わない。そして、最強のおみやを持参する。

前田ひさえ イラスト
ちなみに、行列必至で有名な〈出町ふたば〉も、前日17時30分までに電話すれば、翌日以降の受け取り予約が可能。名物である豆餅はもちろん、他の商品の予約もOK。

和菓子より洋菓子が
無難な理由

和菓子のイメージが強い京都だが、京都人に持っていく手みやげには洋菓子が無難だ。理由は茶道文化が健在の京都では、和菓子は見た目や味だけではなく、その意匠に季節感を取り込んだものも多い。

つまりはおもてなし文化の結晶のようなもの。ゆえにこだわりが強く、人によっては審美眼を光らせて厳しく評価を下している。加えて、京都人は無類の新しいもの好き。目新しい洋菓子の方が実は喜ばれることが多いのだ。

前田ひさえ イラスト
京都で今アツいといわれる焼き菓子。ハイレベルな個人店が増え、一つのムーブメントに。

京都の焼き菓子ムーブメント。

退店後は速やかに
曲がるべし?

京都のお店(特に料理屋さん)には、お客さんが退店するとき店先まで付き添い、さらに角を曲がってその姿が見えなくなるまで見送るという慣習がある。小心者はお店の人を待たせているプレッシャーで、足早になりがち。

前田ひさえ イラスト
客もまた最初の曲がり角で振り向き、一礼するのがマナー。

わがままが言えて一人前?
常連愛が生んだ裏メニュー

下京区の若旦那に聞いた話だが、「京都人は通い慣れた店で、ちょっと融通を利かせてもらうのが好き」らしい。サービスを気にする姿にきっちりプライドの高さが表れるが、そんなわがままから裏メニューが生まれることも。

昭和5(1930)年創業のうどん屋〈やっこ〉のキーシマはその一つ。従業員がうどんだしに中華麺を入れて食べていたところ、常連が食べたがったことが始まり。今や名物だが、あえてメニューには載せていない。

前田ひさえ イラスト
“キー”は中華麺のこと。キーきつね、キーカレー、キーハイカラなどの「応用メニュー」もオーダー可能。

京都人像をチューニング。
リアルな京都を覗く
アカウント6選

京都を知るには足を運ぶのが一番なのは言うまでもない。でも、しょっちゅう京都を訪れるのは簡単じゃないのも事実。そんなときはSNSの力を借りて、京都人の本音やローカルのアツいニュースを覗き見しよう。

連載一覧へ