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スタイリスト・黒田美津子に聞く、窓にまつわる極私的インテリア術

インテリア界の第一線で活躍し続けるスタイリストの黒田美津子さんが、北軽井沢にアトリエを建てた。景色の見せ方から窓辺の演出まで、窓にまつわる極私的インテリア術を紹介。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Masae Wako / edit: Tami Okano

景色を切り取る窓が、インテリアを豊かにする

窓は建築とインテリアをつなぐもの。30年以上にわたり第一線で活躍し続けているインテリアスタイリスト、黒田美津子さんがそう話す。とりわけ外の景色を絵画のように切り取るピクチャーウィンドウは、窓がインテリアに奥行きを与えることを改めて教えてくれるのだ、と。

北軽井沢の森に立つ〈Laboratoryy|Fern|Barn〉は、黒田さんが2024年1月に完成させた山のアトリエだ。築75年の木造平屋をスケルトンにし信頼するデザインユニット〈スタジオドーナツ〉とともに改修した。

「ここで過ごす日は、窓から見る木立や冬の雪景色が何よりの贅沢。窓周りにはとても気を使いました」

庭に面した空間には、テラスへ続く掃き出し窓と120cm角のピクチャーウィンドウ。黒田さんはその2つの窓を、約6mのパノラマカーテンで一気に覆うことにした。

「〈クヴァドラ〉のシアーカーテンを一枚仕立てで使っています。柔らかな生地越しに窓の光や庭の景色がおぼろげに浮かび上がるのは、本当に美しい。生地を片側に寄せた時のたまりも、量感が出てきれいです」

一方、ピクチャーウィンドウの大きさや位置決めには苦労した。大判の紙を壁に仮張りし、離れた場所から眺めてベストな配置を確認。窓の景色に集中できるよう一枚ガラスを選び、窓枠は壁色に馴染む白とした。

「家を造る時、普通はまず建物を考え、そこに合う家具を選びますよね。でも私は逆さま。手持ちの家具や照明、作りたいシーンが先にあり、それを生かす建物を考えたんです」

窓もしかり。東京からここへ来るたびに小さな明かりが出迎えるというシーンに憧れ、玄関の窓を造った。

「普段は忙しくしていても、企画展のためにここへ来て窓を見れば、緑があり、雪景色が広がっている。撮影の準備でしばらくぶりに訪れた日は、同じ窓から見る木々が生長していることに気づいて心が弾みます。その光景が与えてくれる安らぎは、想像以上に大きいもの。私にとっての窓は、人間らしく生きていることを実感できる場所なんです」