中学学高校の先輩・後輩だという隈研吾さんと養老孟司さん。隈さんは養老さんの「脳より身体」という思想に共鳴してきた。その養老さんの依頼を受け「モニュメントでありながら既成のモニュメントに対する批評である」というねじれに惹かれ、設計を始めた。境内のはずれ、崖と林に囲まれた場所は2人で選んだという。
「僕は、どんな建築も、その場所の地形やお隣さんとの関係で造っていくべきだと思うので、地形と一番面白い対話をしている場所を選んだんです」
実験で殺してきた虫たちを追悼するモニュメントだが、お墓とは思えないほど軽やかで明るい印象だ。虫かごにたくさんの虫が集まっているように見えてくる。“人も虫も、天に帰っていく感じ”をイメージし、養老さんの楽観的な死生観を感じられる機会を生み出したいと考えた。小さな建築ゆえに親しみを生む虫塚は、見る人が持つ建築のイメージを広げてくれる。
「小さい建築は本当に面白い。設計する方も、見る方も。小さなものがパブリックな存在になり得るところが建築の面白さですね」
新国立競技場のような大きな建築とはまったく違うものに見えるが、周囲の環境と人々を結びつけるという考えは共通している。
「杜のスタジアムは、神宮外苑という特別な森の中だからこそのもの。森に溶けるみたいな感じを目指していて、世界のスタジアムの中でも、今までにないものになると思います」