デザートを通じ五感の体験を提供する
——〈confetti.yard〉のInstagramは、これがお菓子なのかと目を疑うような素晴らしい造形美のスイーツばかりです。独立される前はどんなことをされていたのですか?
実はお菓子についてはまったくの独学なんです(笑)。もともとは弘益(ホンイク)大学で彫塑を学んでいて、周囲にもアーティストの友人が多く、現代美術を見るのも好きでした。
大学院修了後は、アイウェアブランドの〈ジェントルモンスター〉に就職して、ショップのオブジェ制作を担当していました。仕事にやりがいはあったのですが、やはり会社ですので自分がやりたいこととは少し違った。そのもやもやとした気持ちを、ホームベイキングにぶつけてストレス発散していました。
——お菓子作りというのは、その前からもされていたのですか?
本当に趣味で続けていたものです。YouTubeでベイキングレシピを観て、クッキーやケーキを焼いて友達にあげたりしていたくらい。でも、ある時ベイキングと彫刻って似てるんじゃないかと思ったんです。クリームは石膏のようだし、砂糖はレジンっぽいなと。メレンゲも造形的にすごく扱いやすい。しかも永続的に残る彫刻と違って、食べたらなくなるのがすごくいい(笑)。
いろいろと実験してみた結果、ベイキングでクリエイティブな活動をしてみようと、6年勤めた会社を辞めました。それで2023年に新設洞(シンソルドン)で、オーダーケーキの店をオープンしました。でも今はケータリングや広告などの仕事が忙しくて、注文は受けられないのですが……。
——少し前だったら〈confetti.yard〉のケーキや焼き菓子が買える店があったんですね。セファさんのインスピレーションはどんなところから来るのでしょうか?
食べ物というより、現代美術からの影響の方が大きいと思います。パートナーでありアーティストのチョン・ヒョンサンからは常に大きな影響を受けていて、普段のなにげない、遊びのような会話からアイデアを得ているように思います。逆に彼の作品の3D部分を手伝うこともあります。いつか彼と一緒に作品制作をしたいですね。
——NIKEのエアマックスDn8のローンチイベントにゲーム制作者のMELTMIRRORさん、ミュージシャンのジン・チョイさんと一緒に参加されましたが、その時の作品「Desserts on Dining 8」について教えてください。
MELTMIRRORさんが考えたゲームを食卓上で具現化し、食べられるピースを表現しました。ロボット掃除機の上にバターの造形物を載せ、周囲にパンのかけらを置きました。バターは時間の経過を通じて形が変わっていく、新しい彫刻になりました。また、「食べる」という行為は単にお腹を満たすだけではなく、五感を使った特別な体験なんだということを見せたかった。
この作品を発展させたものを先日ビジュアルアートのフェスティバル『OOP2025』で発表しました。その時は、オリジナルのバターナイフで参加者にバターの彫刻を削ってもらう、参加型のパフォーマンスを行いました。
——美しいスイーツというだけではなく、現代美術の作品のようですね。
ありがとうございます。デザートというものは、単に食べるだけではなくて、暮らしを豊かにするもので、すべての芸術はデザートでもあると考えています。みんなで食卓を囲み、一緒に五感を通じた体験をすることで、新たな考えが生まれる。今後は作品を発表する機会を増やし、作品を通してそんな体験をもっと伝えていきたいです。

今の韓国を定点観測するためのアート、デザイン、カフェ
Art

スピーカー等の機械的な装置を自作し、ノイズと社会を結ぶ体感的な作品を生み出すアーティスト。第15回光州ビエンナーレに参加。「作品制作の技術的なところはもちろん、作家としての態度にも学ぶところが多い」。Instagram:@junhyoungsan
Design

〈ジェントルモンスター〉が手がける「DRESS YOUR TABLE」がスローガンのテーブルウェアブランド。「コンセプト作りにも独特のユニークさがあって、アート的な体験をさせてくれる。これからに期待しています」。Instagram:@nuflaat
Cafe

ソウル内で10店舗ほどを構えるコーヒーチェーン。西村店はかつて郵便局だった建物をリノベーションした空間。「いくつかの店舗限定なのですが〈confetti.yard〉と共同開発したデザートを楽しめます」。Instagram:@camel__cafe