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「韓国文化通信」Vol.25 〈PRISMOF〉主宰・Yu Jinseon

今、最も“要注意”すべき韓国カルチャーを牽引するキーパーソンにインタビューし、その変化を定点観測していく本連載。第25回は『PRISMOF 프리즘오브』という毎号1本の映画を徹底的に特集する、インディペンデント雑誌を発行するユ・ジンソンさん。

text & edit: Keiko Kamijo / translation & coordination: Hyojeong Choi(KACHI MEDIA)

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毎号1本の映画を多角的に紹介する雑誌『PRISMOF 프리즘오브』

——『PRISMOF 프리즘오브』は毎号1本の映画だけを特集するとてもユニークな雑誌ですが、どのような経緯でこういう雑誌を発行するようになったのでしょうか?

ユ・ジンソン

この雑誌を創刊した2015年、当時私は大学生でした。映画が大好きで、よく映画雑誌を買っていたのですが、好きな映画についてはいつも2、3ページしか掲載されていません。めくってもめくってもずーっと自分の好きな映画が載っている雑誌があったらいいのにと考えていました。また、毎号1つのテーマを扱う『magazine B』のような雑誌もあったので、それもヒントの一つになりました。

——ご自身の映画歴について教えてください。

ジンソン

母が映画好きで幼い頃から映画に囲まれた環境で育ちました。当時はまだ配信がなかったので、週末は家族でレンタルビデオショップに行ってそれぞれが好きな映画を借りて観る、そのイベントを楽しみにしていました。

ディズニー映画なども観てはいましたが、母はよく古典映画を観ていて、7歳の頃『ドクトル・ジバゴ』を一緒に観たのをすごくよく覚えています。3時間以上ある映画でしたが、内容がわからなくても家族で一緒に映画を観る時間が楽しかった。私にとっては、映画が一番身近なメディアでした。

たくさん映画を観て育ちましたが、自分の好きな映画を思う存分探求したのは、高校時代。『メランコリア』『エターナル・サンシャイン』『恋する惑星』などから、作家主義のアートフィルムをよく観るようになり、映画を扱う仕事に就きたいと思うようになりました。

——ジンソンさんは1992年生まれですよね?今挙げていただいた映画は90年代から2010年代のものですね。誰かから薦められたのですか?

ジンソン

自分で探すうちに行き着いた感じです。昔の映画は、ビデオやDVDを借りて観ました。でも、リチャード・リンクレイター監督の『ビフォア』シリーズを観た時には、同時代に生まれて、主演の2人と同じ時間の流れを体験したかった!と思いました。全部の映画を一気に観てしまったので(笑)。でも、映画というメディアを使ってそんなことができるのかと驚きました。

——確かに。それは早く生まれた役得ですね。毎号1本の映画はどのようにして決められるのでしょうか?

ジンソン

好きな映画を選んでいるの?と思われているんですが、実はそうではありません。映画を選ぶ基準としては、作品性があることは基本中の基本として、多角的に語ることができる映画、昔の映画だとしても今の時代に議論が起こるような映画を選んでいます。旬の作品というよりは少し前に公開されて、でもなお愛され続けている作品であることも選ぶ基準になっています。

——印象的だった特集のエピソードを教えてください。

ジンソン

ありすぎるんですが、2017年に特集した『불한당:나쁜 놈들의 세상(邦題:名もなき野良犬の輪舞(ロンド))』というソル・ギョング主演のアクション映画。この特集で初めてクラウドファンディングをしたのですが、7時間で1億ウォンが集まって話題になりました。この号をきっかけに読者層が広がり、インディーマガジンから商業マガジンにステップアップできました。

——雑誌を作り始めて10年ですが、今後の展開を教えてください。

ジンソン

昨年、新たにベルリンを拠点にした雑誌『MONOCHROMATOR』を発行しました。海外でも新たな読者を増やし、アートブックの出版にも領域を広げようと考えています。

ユ・ジンソン
@MELMEL CHUNG

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