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「韓国文化通信」Vol.24 〈AgeofBand〉主宰・Kim Ejun

今、最も“要注意”すべき韓国カルチャーを牽引するキーパーソンにインタビューし、その変化を定点観測していく本連載。第24回はインスタグラムで国内外のバンド情報をたった一人で発信する〈AgeofBand(以下AoB)〉主宰のキム・イジュンさん。

text & edit: Keiko Kamijo / translation & coordination: Kim Dejong

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完全に一人で始めたバンドメディア

——オンラインメディアAoBは、現在(2025年9月時点)フォロワー数が8万8000人の巨大メディアです。始めた経緯を教えてください。

キム・イジュン

実は今大学生で、本当は公務員試験を受けようと思って準備していたんですが、卒業前に何か楽しいことをしようと思い、Silica Gelなど好きなバンドの曲に映像を当てた動画をアップしていた。そうしたら、メンバー本人たちに偶然見つかり、面白がられて急激にフォロワーが増えてしまった。それで何かしなければと、バンドの情報をアップしていくことにしたんです。

——ご自身もロックが好きとか、バンドをされていたりしたんですか?

キム・イジュン

実は幼い頃からバイオリンを習っていて、かなり真剣にクラシックを学んでいたんです。親が厳しかったので、聴く音楽もクラシックのみだし、ほかのジャンルの音楽には触れる機会も時間もない。もちろんスマホも使わせてもらえなかった。

でも中学2年の時に、楽器ができそうだからという理由で先輩からバンドに誘われて、初めてベースに触りました(笑)。そこからバンドサークルのメンバーたちと仲良くなり、オアシス、レディオヘッド等の音楽に触れ始めました。そこでクラシックからロックに移行していきました。

今のAoBのスタイルが確立したのは、『ZANDARI FESTA』という毎年開催されている韓国のインディーズ音楽のショーケースがあるんですが、大学入学後にそこでインターンを始めてからですね。韓国のインディーズバンドの面白さにハマってしまいました。韓国だとSE SO NEON、海外だとJane RemoverやYellowcardとかも面白くて聴いていました。韓国のインディーズシーンもヒップホップやエレクトロ等、広がってきて面白かった。

——AoBの活動を教えてください。

キム・イジュン

バンドのニュースを発信するのが中心です。また新譜が出たミュージシャンのアルバムレビューも定期的にしています。でもオンラインで情報発信を続けていくうちに、やっぱりリアルの場でライブを観るのが一番だということに気づき、自分たちでライブのオーガナイズもするようになりました。オンラインメディアで資金を稼いで、ライブで投資をするようなイメージです。

AoBの読者は若いリスナーが多いので、できるだけ低価格のライブを実現できるように頑張っています。また、新人バンドなどはコンテンツとして弱いので、読者の投票を募ってコンピレーションアルバムを出してみたり。情報を届ける工夫をしています。

——現在編集部は何人ですか?

キム・イジュン

取材、執筆、配信、全部僕一人。忙しくなりすぎてしまい、大学も休学しています。記事を楽しみにしていてくれる読者がいると思うと気が抜けません。でも、僕の時間は24時間しかないので、時間がないせいでコラボの機会を逃すことがあったり、楽しいけれど寂しいと思ったりすることも。そろそろ次のフェーズを考えたいですね。

——今、韓国でインディーズバンドを観るならどこに行けばいいですか?

キム・イジュン

乙支路(ウルジロ)や梨泰院(イテウォン)、解放村(へバンチョン)あたりでやってる音楽イベントは、音響は微妙だけれども新しい音楽に出会えるのが面白い。あと、以前はロックといえば弘大(ホンデ)のライブハウスが中心だったけど、今ロックだったらお隣の新村(シンチョン)が個人的には熱いです。「베이비돌(Baby Doll)」や「인피니티클럽(1nfinity club)」は常にチェックしています。

——将来AoBで何をしたいですか?

キム・イジュン

オリンピック公園にある88芝生広場という2万人入る会場でバンドイベントができたら……、夢ですね。

今の韓国を定点観測するためのバンド、ファッション、ブルワリー

Music

WACK
世界から熱い視線を集める韓国インディーズバンド。「韓国でもまだたくさんの人に知られていないノイズ系ロックバンドで、海外の批評家が面白いと言っていて知りました。サウンドも実験的で面白い」。Instagram:@wacksomenoise

Fashion

EGNARTS
CHAE MIN LIMとGYUSEOK YOONによるファッションブランド。「注目しているファッションブランドです。アイテム自体はすごくオシャレなんですけど、ルックの写真にユーモアがあって、すごく面白い」。Instagram:@easynarts

Brewery

맥파이 Magpie Brewing Co.
맥파이 Magpie Brewing Co.
クラフトビールの火つけ役。ブルワリーは済州島(チェジュド)にあるが、ソウルに2店舗タップルームがある。「韓国で一番おいしいと思っているビールを造るブルワリー。ブランディングもすごく素敵で参考になります」。Instagram:@magpiebrewing

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