「韓国文化通信」Vol.20 インテリアデザイナー・Jo Hyunseok

振り返ってみると、小さな頃から自動車が好きで、車の雑誌やミニカーをコレクションしていました。今考えると、それがデザインへの目覚めだったのかもしれません。その後、大学でデザインを勉強していくうちに家具や食器、インテリアに興味を持ち始めて建築の勉強をするようになりました。

一人に絞れないのですが、好きな建築家は？と聞かれたらまずはル・コルビュジエをいつも挙げています。あとは、ポルトガルのモダニズム建築家であるアルヴァロ・シザやソウト・デ・モウラも好きな建築家です。

学生時代に建築事務所にインターンに行っていたのですが、その時に自分はインテリアデザインの方が合うと感じたからです。その後、インテリア事務所にもインターンに行く機会があって、卒業前からその事務所で働いていました。インテリアデザインの仕事を続けていれば、様々な建築家とも仕事ができるし、その方が面白いなと。

2019年に独立をして4年くらいずっと1人でやっていたんですが、少しずつ手伝ってくれる人が増えてきて、今は4人で活動をしています。

今年3月、代官山にオープンした韓国のライフスタイルビューティブランド〈ノンフィクション（NONFICTION）〉の日本初となる路面店。古い木造一戸建ての建物をリノベーションしました。

フレグランスのブランドなんですが、香りというのはとても繊細なもの。空間の中で無駄な要素を最大限になくして、訪れるお客様がいかに香りに集中できるかにこだわって設計しました。

元からあった大きな柱などの建築的な要素を最大限に生かしながら、〈ノンフィクション〉のアイデンティティが自然に染み込むことを意識しました。もちろんお店なので動線を考慮しながら。お客様が長く滞在できる空間になったのではないかと思います。

ありがとうございます。僕が好きなのは、空間に圧倒されてしまうような場所ではなく、素朴でありながら空間自体を生かすような空間の在り方で、〈ノンフィクション〉が醸し出す世界観と似ていたので、とても気持ちよく仕事をすることができました。

今回韓国の今を感じるカルチャーをおすすめしてほしいと言われたので、一つをこの店にしています。というのも、ここでは商品だけではなく、韓国のカルチャーが体験できるから。

ウィンドウには、ニューヨークを基盤に活動する作家のキム・ミンジェが〈ノンフィクション〉のために制作したテーブルが置かれていて、店内には陶芸家のチョ・ヒジンやアクリルで制作をするユン・ラヒの作品が展示されています。

「一日を美しく過ごしたい」といつも考えています。素朴かもしれませんが、身の回りには自分が好きな美しい日用品を置いて、大切なものを毎日見たり経験したりすることが、結果的にいい仕事につながっている気がします。