——カデホの音楽を語るうえで、一つ重要なキーワードに“FREE”という言葉があると思います。この言葉に込めた思いを聞かせてください。
キム・ジェホ
確かにカデホでは、曲やイベントに“FREE”という言葉を使うことが多いですね。きっかけとなったのは『FREESEASON』という自主企画のイベントです。その前までの活動は、決まった場所に行って、オーガナイザーのコンセプトに合わせた曲を演奏していました。
でも『FREESEASON』は、昼間に、地下じゃないところで、僕らが即興で音楽を演奏し、みんなで楽しむ。そんな感じの自分たちがやりたいことを全部詰め込んだイベントです。場所や時間、ジャンルなどに縛られない活動という意味でも“FREE”はカデホにとって重要です。
——皆さんの曲は、ジャンルでは縛れない様々な音楽の要素が詰まっているように思いますが、お2人はどんな音楽を辿ってきたのですか?
ジェホ
ミュージシャンになる前はスケートボーダーでした。当時、スケートボーダーが聴いている音楽といえば、ヒップホップかパンクの2択。僕はパンクが好きで、ベースを始めました。
でも、楽器をやり始めると聴く音楽が少し変わってきて。演奏していて楽しかったのは、ブラックミュージックだったんですよね。影響を受けたミュージシャンは、ディアンジェロです。
イ・スンジュン
2000年代初頭、学生時代に聴いていたのは、もっぱら韓国のヒップホップです。同時に日本のアニメも大好きで、アニメの主題歌やサントラはすごくいい曲が多かったので、そこからいろんなミュージシャンやカルチャーを知りました。
僕の持論ですが、韓国のヒップホップと日本のアニメが混ざって、結果m-floに行き着いたんだと思います(笑)。
——興味深い考察ですね(笑)。即興音楽が特徴だと思いますが、レコーディングのような作り込みの作業の時はどのように進められるのでしょうか?
ジェホ
ライブとそんなに変わらないんです(笑)。ライブの時に伝わる雰囲気やバイブスをレコーディングスタジオにもできるだけ持っていくようにしています。
レコーディングの最中に新しい曲が生まれることも、もちろんあります。即興の雰囲気を生かしながら、仕上げの段階はできるだけ整える、そんな感じでしょうか。
——もう一つ、幅広いジャンルのミュージシャンとのコラボも特徴の一つかなと思います。例えばラッパーのNucksalさんや民謡歌手のイ・ヒムンさんら。なぜコラボレーションを大切にされているのでしょうか。
ジェホ
もともと僕らはインストゥルメンタルバンドで、メンバーそれぞれの中にある音楽から演奏の幅がどんどん広がっていきました。コラボでは、自分たちにはない音楽性を持ったミュージシャンにお願いしていて、結果的に自分たちの可能性を広げることになりました。
最近のコラボは次のアルバム『Endless』(6月6日発売)ですが、カデホのサウンドを考えるうえで一番濃いものになったと思います。
DUBエンジニアの内田直之さんが韓国のスタジオまで来てくれて、まるでメンバーのようにサウンドの方向性を提示してくれました。その流れでキーボーディストのエマーソン北村さんにも参加いただいて。すごく意義深いコラボになったと思います。
——そのアルバムが出たら活動が増えそうですね。日本にも来る機会はありそうですか?
スンジュン
9月にライブ、11月には日本で初となる『FREESEASON』をする予定です。お楽しみに!

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DMZとは非武装地帯の意。6月13日〜15日、江原道鉄原(カンウォンドチョルウォン)の非武装地帯で開催される平和の歌を歌う音楽祭。国内外からアーティストが集結。日本からはTENDOUJI、南ドイツが参加する。Instagram:@dmzpeacetrain
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映像監督としてシリカゲルやaespaらのMVを手がけ、並行してゲーム開発者としても活躍する鬼才。「彼が作る映像も驚きに満ちているし、さらにゲーム制作もするなんて。いつ寝ているのか聞きたい」(スンジュン)。Instagram:@meltmirror
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通称「AoB」。「밴드 붐은 온다(バンドブームが来る)」というメッセージの下、バンド情報を発信。「最近韓国で主流のペーパーレスメディア。ここを見れば韓国の最新音楽がわかります」(スンジュン)。Instagram:@ageofband