——独立系〈YOUR‒MIND〉はいつオープンされたのでしょうか?
イロ
2009年にオープンしました。アートブックフェアの『UNLIMITED EDITION』も同じ年に始めたので、両方今年で17年目になります。書店では、個人のアートブックを中心に、自分たちで作った出版物やグッズ等も販売しています。ソウルの人たちは新しいものが好きだから10年以上やっているというと安定よりも逆に挑戦的な方向性が要求されます。
——今のお店がある場所は、駅からも遠く少し不便な印象ですが、場所へのこだわりはありますか?
イロ
最初のお店は弘大(ホンデ)にありました。ホンデはインディペンデントカルチャーの聖地みたいな場所なので、もちろん一定数のお客さんはいました。でも、僕としては、そのわかりやすい感じが嫌だった。繁華街から離れた場所で挑戦したかったんです。
また、今の空間を作った建築家の方の提案が良かったのも引っ越しをした理由の一つです。駅からも遠く少し不便な場所にあるかもしれませんが、わざわざそこまで来たからには店での滞在を楽しんだり、じっくりと真剣に本を見て買ってくれたりするお客さんが多い。そんな雰囲気が気に入っています。
——書店を始める前はどんなお仕事をされていたのですか?
イロ
学生でした。本を読んだり、小説やエッセイを書いたりするのが好きで、当時は作家になりたかった。何度かトライしましたが、公式に出版するのは難しい。だから、自分で作った本を売ろうと思って書店を始めました。
最初は個人の本と稀少価値のある古本を両方扱っていて、古本が結構売れていたんです。でもある時、最初に自分がやりたかったことに立ち返って古本を扱うのを一切やめて、個人の作家の本ばかりを置くようにしました。
——ほぼ同時期にアートブックフェアを始めていますが、その理由は?
イロ
書店だけではお客さんが少なかったことが一つ。そして、当時アートブックは、ただ置いてあるだけでは作家の意志が伝わりづらく、比較的価格も高いので誤解が生じることがありました。
それならば、作者が自身の作品について説明しながら直接販売する場所があったらいいだろうと思いブックフェアを立ち上げました。
——イロさん自身のことを教えてください。学生時代はどんなカルチャーに触れてきましたか?
イロ
小中学生の時は韓国と日本の漫画に夢中でした。食事代としてもらったお小遣いを、ご飯を食べずに漫画代に回していました。当時はマニアックな漫画ではなく、いわゆるメジャーなものばかり読んでいました。
ひょっとしたら、全体的に言えるかもしれませんが、僕はカルチャーに触れる時にあまり個人的な趣味に偏らず、幅広くいろいろなものを摂取しているのかもしれません。
——大学時代は読書をよくされていたそうですが、どんな作家の本?
イロ
すごくいいタイミングになってしまいましたが、ノーベル文学賞作家になったハン・ガンの作品はどの作品も本当に好きでたくさん読んでいました。ピョン・ヘヨンの小説も好きで、いろいろと読んでいました。
——最近気になるカルチャーやアーティストを教えてください。
イロ
3名の作家を選びましたが、彼らはそれぞれの活動をしながら、自分たちでマーケティングをし、新しい流行を作り出しています。すごいのは、彼らが一つの文脈だけで活動するのではなく、個人としてのスペクトラムを広げているということ。これからは作家が個人で作品を広めていく。韓国のこれからを作る新しい力だと思います。
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今の韓国を定点観測するためにチェックすべき人
People
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ライフスタイルブランドのコンサルティング会社〈Hearty Handy〉のハンドラー。ハンドラーとは自らが命名した肩書。主体的に自分の人生を切り開くという意味だ。日々新しいモノやコトと出会うインスタ(@kphnsohn、フォロワー数約6,080人)には定評がある。「彼女のインスタを見ていると、今何が新しくて面白いのかがわかります」
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ブランドマーケター&インフルエンサー。公式インスタグラム(@2tnnd)のフォロワ-数約10万人。YouTubeチャンネル『이승희의 영감노트(イ・スンヒのインスピレーションノート)』は登録者約3.85万人、ポッドキャスト『일친구』を運営する。元ネイバー社員。ITビジネスにまつわる話や、ブランド戦略の話、最近読んだ本の紹介などを行う。
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自身のインスタグラム(@muguasu、フォロワー数約8.8万人)やYouTube『撫果樹の家』で家と日常を記録しながら、人生を盛り込む器としての空間の重要性を語る。ブランドストラテジーマネージャーとしてコンサルティングも行う。著書『안녕한,가(元気な、の)』『무과수의 기록(撫果樹の記録)』『집다운 집(家らしい家)』を出す作家でもある。