ものづくりと真摯に向き合う3組の拠点
欅と銀杏に彩られた北山通。なかでも個性あるショップが顔を揃える紫竹エリアに、また目的に足を運びたい一軒が登場した。築年数不詳という町家をリノベーション。土壁と表情を持たせた大谷石が印象的な空間は、温もりと洗練さを兼ね備えたもの。イタリア・ミラノ在住時に出会った3人が集い、共同で始めたShop & Galleryとは。
自然素材を使ったアロマプロダクトを手がける、栃木・益子ベースの〈FLŌRAOUS〉、手仕事によって生み出されたファッションアイテムを中心にセレクトする、群馬と鎌倉が拠点の〈BELLÙRIA〉、ニットウェアブランドでミラノがベースの〈YURI PARK〉。なぜ、この3者が再び京都で再会したのか……。
「京都は元々興味があった街。縁あって紹介された建物に惹かれて、ここに店を構えることを即決しました。そこで声をかけたのが、2021年に浅草で一緒にポップアップショップを開いた〈BELLÙRIA〉と〈YURI PARK〉でした」と〈FLŌRAOUS〉のダイトクヨシマサさんは振り返る。
一方、〈BELLÙRIA〉の山越弘世さんはこの場所に決めた理由について「街全体に文化が根付くのが京都。街中から少しはずれた北山通は、ロケーションもすごくいい。目的を持った人に来てもらえれば」と語る。
そして、学生時代を京都で過ごし、他の2人と同じように京都に対する思い入れがあった〈YURI PARK〉も、自分の世界観を表現する場所を探していたという。
かくして3組のショップを基本軸にしながら、それぞれの着眼点によるアーティストや作家を紹介するギャラリーが幕を開けた。
それぞれが個性を放ちながら溶け合う
高崎、桐生、鎌倉に続いて、西日本に初めて拠点を持った〈BELLÙRIA〉は、バイオーダーでハンドメイドされるジュエリーブランド〈市松〉をはじめ、靴ブランド〈forme〉の別注品や、ティファニーのヴィンテージ、アフリカ・トゥアレグ族のシルバーバックルを使ったオーダーベルトなど、ここでしか手に入らないアイテムを展開する。
〈FLŌRAOUS〉は、自然由来のエッセンシャルオイルやサシェなど香りにまつわるものから洋服まで、暮らしを纏うものを揃える。京都でよく見かけるものとはちょっと違った買い付けの古物が店頭に並ぶのも楽しみだ。
そして、この場をつなぎ合わせるかのように存在する〈YURI PARK〉のニット。共同オーナーという形ではあるが、卸し以外では初の出店を実現した。ある程度のコレクションの分量を揃えるだけでなく、修繕を受け付ける窓口としても機能するのは、ファンにとっても嬉しい。
ギャラリーの柿落としに松浦弥太郎が登場
3つの屋号を合わせたショップであると同時に、ギャラリーとしての機能も備えた〈北山夏椿〉。初回のイベントはファッションディレクター・金子恵治がキュレーションするフォトグラフTシャツプロジェクト「GOAT PHOTOGRAPH TEE EXHIBITION」だ。身幅や着丈などのスペックを繊細に調整した、オリジナルボディをベースにしたフォトグラフTシャツ。
その第1弾は、文筆家の松浦弥太郎をゲストに招聘。金子はコロナ後に世界各国を旅してきた中で切り取った人々の営みを、松浦は「On Reading」をテーマに様々な場所で読書をする人々を、Tシャツの上に表現している。会期は10月26日(木)〜30日(月)。ちなみに28日(土)16時〜18時には金子・松浦の2人も在廊が予定されている。
京都の長い歴史の1ページに加わった、新たなものづくりの世界に浸る場所の登場。どんな世界観を繰り広げてくれるのか期待せずにはいられない。