旅をした人:ジェローム・ワーグ(シェフ、アーティスト)
ふくどめ小牧場(福留洋一):養豚
「鹿児島への旅は3回目。何といっても、桜島の印象は強いね。暮らしのすぐそばに活火山があることに、本当にいつも驚かされるんだ」
桜島を眺めながら錦江湾を渡るフェリーの上でそう話すジェローム・ワーグさん。まず目指したのは県東部の大隅半島・鹿屋市の〈ふくどめ小牧場〉。実はジェロームさん、この牧場を訪ねるのは2度目。ジェロームさんの仕入れのポリシーはとても明確で、持続可能な取り組みを行う生産者のものであることが必須。北海道から九州・沖縄まで、なるべく生産者のもとを訪ねてコミュニケーションし、ライフスタイルや考え方も知ったうえで仕入れるという。
〈ふくどめ小牧場〉には、そんな視点からジェロームさんの料理に欠かせない存在になった豚がいる。サドルバック種というイギリス原産で、日本ではここだけの稀少品種だ。牧場を率いる福留洋一さんがこの品種に惚れ込み、10年ほど前から鹿屋の地で育てる。福留さんが話す。
「現在、サドルバック種は世界中で1000頭ほど。成長までの時間が通常の種よりずっと長い、暑さに弱いから豚舎では育てられず、放牧が必要……。従来型の大量生産の牧場では、到底採算が合わないんです」
初めて聞いたという頭数の少なさにジェロームさんが目を丸くする。
「その手間あってこそでしょうか、サドルバックは脂身がとても甘く、それでいてくどくない」
丹精込めて育てる豚は、自社で加工まで行う。ガラス張りの加工場では、豚を解体したり、ハムを作ったりする作業を見ることも可能だ。
「命をいただくのだから、隠し事なく見せられるべきだし、すべての部位を余さず使いたいと思うんです」と福留さん。近い将来、さらに広大な土地で、豚はもちろん牛も放牧したいと話す。「それはとても楽しみだなあ」とジェロームさん。
「福留さんならばきっと、牛の乳からチーズも作り始めるでしょうから(笑)。また見に来ますよ!」
ふくどめ小牧場の味に出会えるお店はこちら
aview Cafe & Flowers(鹿児島市)
Araheam(鹿屋市)
Bee(鹿屋市)