Watch

Watch

見る

「愛って、些細な日常の記憶」。漫画家・真造圭伍が選ぶ、愛の映画『インターステラー』

愛の映画を語る時、その人が理想とする愛の形が見えてくる。漫画家・真造圭伍さんに聞いた、愛と映画の話。

text: Asahi Hoshi

連載一覧へ

愛って、些細な日常の記憶

よく本棚のシーンの親子愛や人類愛が話題になりますが、自分としては、よく見ないと気がつかないような、リアリティを出すための細かい演出がとても好きです。宇宙船内のシーンで、窓から見える機体の翼に、よく見ると誰かが歩いた足跡がついているんですが、それがめちゃくちゃ好きで。ほかにも、無重力で浮いているペンを手でどかす仕草とか、小物の一点一点から積もった埃の感じとか。映画の中で存在する生活感を大切にして、しっかり描いているところがすごくいいなぁと思います。

かつて連載していた『森山中教習所』が映画化した時、撮影現場を見せてもらったんですけど、開けるはずのない本棚にものが入っていたんです。「置くことで醸し出されるものがある」と美術さんが言っていて、すごいなと。見えないところもこだわることで、良いものができるんだと改めて感じました。

僕自身も漫画を描く時に、わざわざ描かなくていいものをあえて描くことを大切にしています。一見無駄に見える部分に、みんなの中にある潜在的な記憶が宿っているなと思う。昔、窓際に置いてある缶コーヒーの描写を友達に褒められたことがあって。別に描かなくてもいいけど、確かにそういうところに置くよねっていう(笑)。そういう些細な日常の記憶こそ愛おしいし、それが僕にとっての愛の描き方かなと思います。『インターステラー』からも、そんな愛を感じます。

必ず帰ってくる。固く約束を交わした愛娘を地球に残し、宇宙の彼方へと旅立った主人公の運命や、いかに?第87回アカデミー賞視覚効果賞、第41回サターン賞最優秀SF映画賞ほか計6部門を受賞。監督:クリストファー・ノーラン/出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイほか。

連載一覧へ