加山竜司
そもそも、コースの造りには決まり事があるのでしょうか?
笠原誠
絶対ではありませんが、18ホールにパー3、パー5が4つずつあるのが一般的ですね。
加山
ではロングホールになぞらえて、長く愛され続けるクラシックな作品をパー5としましょうか。反対にパー3は新しめのものに。
笠原
では早速ラウンドへ。1番は初心者も楽しめる作品として『あした天気になあれ』を挙げたいです。
加山
“チャーシューメン”ですね。
笠原
スイングするときの掛け声に使われた名言ですね。ゴルフのルールには注釈が付いていて勉強にもなります。主人公の向太陽(むかいたいよう)がラウンドの合間にたっぷりサンドイッチを食べたりと、自身もゴルファーであるちばてつやさんならではの描写も楽しい。
加山
古典的な作品ということで、パー5ですね。
笠原
最近だと、渋野日向子さんがモデルの『バウンスバック』は親しみやすいはず。バウンスバックとは、ボギーかそれより悪かった直後のホールでバーディ以上の結果を収めること。彼女の強さの特徴でもある立ち直りの早さを主題にした物語です。
加山
同じく連載中の『KING GOLF』は、不良がゴルフに目覚めていく話。素人目線なので学びもある。今も新しいゴルフ漫画はあるけれど、漫画史的には1989年から90年が特に熱かったんです。ジャンプで『隼人18番勝負』、チャンピオンで『激闘!荒鷲高校ゴルフ部』、サンデーで『青空しょって』、そしてマガジンで『あした天気になあれ』と、四大週刊少年誌すべてにゴルフ漫画が載っていたんですよ。
笠原
すごい!当時のゴルフ人気を裏づける盛り上がりですね。日本を代表するゴルファーたち、青木功さん、ジャンボ尾崎こと尾崎将司さん、中嶋常幸さんの「AON」が注目されていた頃とも重なります。
加山
2017年まで、30年以上続いたゴルフ漫画専門誌『GOLFコミック』もありました。ゴルフ体験記『髙橋ヒロシの暫定球いきまっす!』や、クラブ作りをテーマにした『(有)斉木ゴルフ製作所物語 プライド』など、ユニークな作品を残しています。
笠原
裾野が広いですね。これらを加えていたら、もう前半戦最後の9番ホールです(笑)。パー5で『プロゴルファー猿』を入れませんか?
ラウンドを折り返し、肝となる“坂田コーナー”へ!
加山
ゴルフ漫画というジャンルを切り拓(ひら)いた名作ですね。手作りの木製クラブでスーパーショットを連発しまくる荒唐無稽なキャラクターは少年漫画の延長として楽しめる。後半戦スタートの10番ホールは、これまた入門にぴったりな『オーイ!とんぼ』から。ゴルフに欠かせない、プレーヤーとキャディの関係性を丁寧に描いていますね。
笠原
原作のかわさき健さんは、もともとプロを目指し研修生として学んだ方。技術はもちろん、経験者だからこそ知る選手の精神面なども作品に落とし込んでくださいます。
加山
ゴルフ漫画に原作があるものが多いのにも納得です。
笠原
プロとして活躍した坂田信弘さんも数々の漫画原作を手がけられました。のちにアニメにもなった『DAN DOH!!』、変名で書かれた『天才伝説』、30年以上連載されたプロゴルファーの一代記『風の大地』など。これらをマスターズが行われるオーガスタ・ナショナルGCで最難関と呼ばれるアーメン・コーナーになぞらえて「坂田コーナー」としませんか?
加山
ぜひ!全84巻になる巨編『風の大地』はパー5ですね。
笠原
続く14番は一風変わった『ゴルフの微笑み。』に。古今東西の実在するゴルファーの逸話が紹介されています。全2巻で読みやすい。
加山
では15番、16番も趣向を変えた少年漫画を。主人公が450ヤードも飛ばす『ライジングインパクト』に、正確なショットを操る『ROBOT×LASERBEAM』も。
笠原
450は世界記録級(笑)。
加山
『わたるがぴゅん!』をはじめスポーツ漫画の名手である、なかいま強さんは『黄金のラフ』でゴルフをチームプレーとして描いたのが新鮮でした。
笠原
漫画家視点でも、ゴルフは様々に描かれてきたんですね。
加山
ラストの18番ホールはパー5で『千里の道も』に。原作ありで、1人のゴルファーを丁寧に描く、ゴルフ漫画らしさが詰まった一作です。
笠原
ここまで回れば、知識だけでも相当なレベルでしょうね!