眠る、くつろぐ、本を読む。セカンドリビングのある寝室
このドアの先が寝室。そう思って扉を開けたら、上質なホテルのような一室が現れた。自然光が差し込む明るい部屋は約40m2と広々。ベッドの足元側にはソファが置かれ、本棚の傍らには読書用の椅子まである。
「眠るだけでなく、本を読んだり犬と遊んだり、ぼんやり物事を考えたり。日常生活の心地よい時間を集めたような寝室をイメージしたんです。例えば一人暮らしの部屋みたいに、すべてが同じ空間の中で完結する快適さがいいなあ、と」
そう話すのはデザイナーの勝田隆夫さん。〈オニツカタイガー〉などの商業空間から家具製作まで手がける〈LINE−INC.〉の代表だ。2017年に自邸を設計した際、建物の中でもとりわけ明るくて心地よい1階の東南に主寝室を配置した。住宅設計のセオリーに収まらない自由な発想は、アパレルや飲食店を多く手がける勝田さんらしくもある。
2階には、家族や友人が集う開放的なダイニングキッチンや、ゆったりしたリビングもちゃんとある。そのうえで造ったこの寝室は、勝田さんと妻の美穂さんにとって、いわば“セカンドリビング”なのだろう。
「僕が2階でお酒を飲んでいる時に、妻はベッドサイドで読書に没頭する。妻がキッチンにいる間、僕は寝室にPCを持ち込んで仕事に集中する。個々の時間を充実させるための最適解的な空間でもあるんです」
当然、ベッド以外の家具選びも重要で、座ってよし、寝そべってもよしのボックス型ソファは、19世紀英国のチェスターフィールドソファを現代的にリデザインしたオリジナル。「最近はこういった、普遍的な家具をシャープにしたデザインに惹かれます」と勝田さん。家具は黒やグレーでスタイリッシュに揃えつつ、手仕事感のあるテキスタイルやラタンを使ったデザイナーズ照明を合わせて、自分たちらしい色を出している。
さらに、「壁は湿度調整の機能を持つ漆喰、窓の光は遮光付きロールスクリーンと遮光ブラインドで二重にコントロールしています。休息の場でも第二のリビングでも書斎でもあるので、一日中快適でいられる環境に整えておきたいんです」。