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プラモデルは、かくしてアートになる。ワタリウム美術館で展覧会中の加藤泉に話を聞く

現在、ワタリウム美術館で『加藤泉―寄生するプラモデル』展を開催中のアーティスト・加藤泉さん。木や石などの自然素材のほか、ファブリックやソフトビニールなど、さまざまな素材を用いて表現を刷新する加藤さんは、今回新たにヴィンテージプラモデルを素材、表現媒体として取り入れたという。果たしてどんな展示になっているのか、話を聞いた。

text: Emi Fukushima / photo: Koichi Tanoue

プラモデルは、かくしてアートになる

原始的な人の形のモチーフを軸に、絵画や彫刻などの立体作品を発表するアーティストの加藤泉さん。現在、外苑前のワタリウム美術館で展覧会『加藤泉―寄生するプラモデル』を開催中だ。

木や石などの自然素材のほか、ファブリックやソフトビニールなど、さまざまな素材を用いて表現を刷新する加藤さんは、今回新たにヴィンテージプラモデルを素材、表現媒体として取り入れた。

「もともとプラモデルが好きで、コロナ禍で時間ができた時、何か面白いものはないかと探して見つけたのが、アメリカ製やイギリス製の、昆虫や動物をモチーフにしたヴィンテージプラモデルです。あらゆる面で今のプラモデルよりイカしているんですよね。まずは一見して箱がカッコいい。描かれている絵やデザイン、紙貼りの作りにグッときます。また本体についても、着彩を想定していない分、元のプラスチックの色味が良かったり、材質が硬かったりと素材的な面白さがある。そして何より惹かれるのがつなぎ目。容易にパーツが分解できそうな噛み合わせの悪さと、分割の仕方に発見があるのが毎回たまらなくて。自分の作品にも取り入れられないかと考えたのが始まりです」


その言葉の通り、つなぎ目があえて強調されたプラモデルを、さまざまな立体作品にコラージュしていった加藤さん。試行錯誤を繰り返して最終的に辿り着いたのは、自らプラモデルそのものを表現してしまうという斬新な試みだった。

「念頭においていたのは、グッズではなくアートを作ること。全くもって新鮮なものを作りたいなと考えていました。その中で閃いたのが、石の作品そのものをプラモデルにすること。友人の紹介で知り合ったプラモデル製作会社〈ゴモラキック〉の神藤(政勝)さんに話してみたら、“そんなの見たことない”と面白がってくれて(笑)。人にウケた時って大体うまくいく。あとはそのアイデアを、シンプルに形にしていくだけでした」

出来上がったのが今回展示されている《オリジナル・プラスチックモデル》。石をプラモデルにし、デカールを絵で表現したほか、箱、説明書、付録ポスターまでが形になったユニークな作品だ。

加藤泉_オリジナル・プラスチックモデル

作品を良くするためにいかに動くか

さらに今回の展示では、木彫とプラモデルを組み合わせた立体作品や、人型の絵に、プラモデルの箱や取扱説明書に掲載されている動物の挿絵とをコラージュした平面作品も展示される。自身のアイデンティティとも言える抽象的なモチーフと、ある種既存の完成品でもあるプラモデルが共存して一つの作品になっているところが特徴的だ。

「僕のスタンスは明確で、自分でやった方がいいことは自分がやるし、誰かの手を借りた方がよければ借りる。例えば人型の絵は、ほかの人にはできない自負があるから続けています。一方で動物の造形は、僕がやらなくても、プラモデルや箱の絵で十分だし、むしろその方が素敵。だから使うというジャッジなんです。あくまでも僕がやりたいのはアート。作品を良くするために、適した素材とコラボレーションをしているという感覚です」

そして、発表した作品にタイトルなどで余計な説明を与えないのも作家ならでは。その姿勢からは、加藤さんなりのアートの捉え方が見えてくる。

「いい絵を観ると、なぜか涙が出たり、不思議と勇気をもらえたりする。芸術は、自然界で言えば夕日みたいなものだと思っています。要は、作り手が何を伝えたいかよりも、観る人がどう感じるかの方が大事。だから説明はいらないかなと」

加藤泉さんの作品