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Yogee New Waves・粕谷哲司がゆく、横浜スパイスカレー探訪記

多いときは1日4食(!)食べていたという無類のカレー好き、粕谷哲司さん。店を巡るだけでは飽き足らず、最近は自らキッチンに立ち、カレーを作っているという。「音楽に通ずるものがある」と話す彼と一緒に、横浜のスパイスカレー店3軒を開拓することにした。

photo: Jun Nakagawa / text: Ku Ishikawa

スパイスカレーの楽しさは、味の五角形にあり

「3時間で3軒回るから、お腹が心配ですね〜」

そう笑いながらも、久しぶりのカレー店巡りが楽しみとのことで、待ち合わせ場所へ集合30分前に登場した粕谷さん。

「バンドのメンバーもカレー好きで、みんなでお店を回る習慣があったんです。どんどんのめり込んで、気づいたらカレー専用のアカウント(@kas_curry)まで作っていました」

純粋に味が美味しいだけでなく、何種類ものルーや副菜、スパイスを混ぜることによって生まれる、未知の味にたどり着くことがあるからやめられないのだという。

「食べるときは、味の五角形(塩味、甘味、苦味、酸味、旨味)を頭に思い描きます。目の前の一皿はどこがどう尖っているのか。これとこれを混ぜたらどう変わったか。一口一口、確かめながら、ミックステープを完成させていく感覚です(笑)。僕は最後に全て混ぜる派なのですが、最終系のバランスも考えて食べ進めます。自分で起承転結をつくりながら楽しめるのが、カレーの魅力だと思いますね」

1軒目:〈キング・ロティ〉

しっかりしたスパイスと、
具材を生かすひと手間

Yogee New Waves 粕谷哲司がゆく、横浜スパイスカレー探訪記

まず向かったのは、2軒目で行く〈マルマサラ〉の姉妹店〈キング・ロティ〉。スパイスカレーとタコスのお店だが、この日は週2回のビリヤニの日。せっかくなので「鯖のビリヤニ」をいただくことに。

プレートの真ん中には、素揚げした鯖の文化干しと一緒に炊き上げられたバスマティライス。横に添えられるミールスは、烏龍茶葉で出汁を取ったポークカレーに、ラッサムとライタだ。まずそれぞれを一口ずつ味見し、粕谷さんが注目したのはポークカレー。

「八角のような甘い風味があります。へえ、アニスシードというスパイスが味の決め手なんですね。美味しいなあ。この香り、実はご飯と合わせるのがあんまり好きじゃなかったんですが、価値観変わりました」

鯖を一度揚げてから蒸しているのは、臭みを取り、スパイスを立つようにするためだそう。

「そのひと工夫によって、鯖の文化干しにしっかりスパイスの酸味が入っていますね。そこに副菜のラッサムとライタを混ぜることで、尖っている甘味と酸味が調和する。これはバランスの良い一皿です」

King Roti(キング・ロティ)

住所:神奈川県横浜市中区福富町仲通2-4|地図
営:12:00〜24:00
休:火曜

2軒目:〈丸祇羅(マルマサラ

塩味の少なさが、
スパイスや副菜を引き立たせる

丸祇羅のカレー

〈キング・ロティ〉から徒歩1分の場所にあるのが、〈マルマサラ〉。怪しげな雑居ビルの階段を上ると、広々とした空間がいきなり現れる。美大出身で陶芸家でもあるオーナー・六反征吾さんがD.I.Y.で作り、BGMはひぐらしの鳴き声。

「仕事柄、カレーを食べるときのBGMには注目してしまいます。大阪の〈SOMA〉というお店では、店主自作のアンビエントが流れていて、食べていると宇宙と繋がるようなトリップ感が味わえる。大げさかもしれませんが、そんなスピリチュアルな体験と言いますか。このひぐらしの鳴き声も、心を静めてカレーに向き合うトリガーになっていますね」

メニューは、日替わりプレートとオプションのみ。写真を見て分かるように、ルーや副菜が丁寧に仕切られている。いきなり全部混ぜずに、それぞれの味をゆっくり楽しんでもらいたいからだそう。さて、味はいかに?

2食目ながら、スプーンを運ぶ勢いは止まらない。

「これは……新感覚ですね。パプリカ主体のマラバール、フェンネル香るキーマ、スリランカ由来の豆カレー、どれも塩味がかなり少ないです。でも薄味じゃなくて、スパイスの複雑な味わいはしっかりある。全体が静かなぶん、銀の丸皿に入った帆立のアチャールの旨味が強く引き立つ。いやー、美味しいです」

丸祇羅(マルマサラ

住所:神奈川県横浜市中区福富町仲通4-2 一和ビル3F|地図
営:11:30〜15:00
休:第1・3・5日曜日

3軒目:〈ボーディ・セナ〉

鮮烈な酸味と塩味は、現地の味

〈ボーディ・セナ〉のカレープレート

最後のお店は、実在した高名な僧侶の名前を店名とする〈ボーディ・セナ〉。店内はインダストリアルな什器と、インドのタペストリーや絵が混ざり合った、現地の食堂のような雰囲気。しかもシェフは南インド出身、とくれば、現地でも定食として親しまれるミールスを注文する。

カレーはエビのポリヤル、フィッシュ、チキンの3種類。副菜はラッサム、サンバル、野菜のポリヤルで、ライス以外にパパドと2種類のプーリがつく。オードックスでありながら、ボリューム満点のワンプレート。

「チキンカレーの酸味、フィッシュカレーの塩味がかなりガツンときます。チキンはトマトだけでこの酸味というから、相当な量を入れていますね。フィッシュは塩味も強いですが、魚の香りも同じくらい強い。この2つの尖り方は、かなり現地風なんじゃないでしょうか」

ライス、ラッサム、サンバルは食べ放題。「このパンチの強さは、ライスが欲しくなりますね」と3軒目でもお代わりする粕谷さん。

「辛味は意外とないんですよ。だからパンチはあるけど、食べ疲れしないです」

bodhi sena (ボーディ・セナ)

住所:神奈川県横浜市中区住吉町3-28|地図
TEL:045-264-8297
営:11:30〜15:00、17:00〜21:00
休:日曜日

粕谷哲司
「大満足! さすがに3軒はお腹が膨れますね。夜ご飯はいらないかな」