“仲の悪い”夫婦こそが、ドラマになる
新人議員と女優の夫婦のドタバタ離婚劇———この骨子から制作がスタートした『離婚しようよ』。宮藤さんがタッグを組んだのは、ラブストーリーの名手である脚本家の大石静さんだ。共作で進めることはプロデューサーからの提案だった。
「率直に面白そうだなと。バラエティ番組の構成をやっていたこともあり、複数の頭で考えるのは好きなんです。しかも大石さんとならなおさら。ただ1話ごとに交代で書く形式は目新しくない気がして、手紙を交換するように、数シーンずつ交互に書き進めることになりました」
ポンコツな三世議員の夫・大志の不倫に国民的女優の妻・ゆいが激昂し、離婚話が勃発することから始まる本作。原稿を渡し合う過程は新鮮だった。
「脚本家同士で手の内を明かし合う機会はまずないので勉強になりました。例えば大石さんは、奇を衒うことなく普通の言葉で深みがあるセリフを書かれるし、年齢や立場の異なる女性の考え方の違いが表れる描写が素晴らしい。あとはエロさへの探究心も飛び抜けている(笑)。互いに得意な部分を担って苦手な部分を任せることで、いいバランスで進められたと思います」
もちろん宮藤さんらしさも随所で発揮されている。真骨頂と言えるのが夫婦喧嘩のシーンだ。
「大志を詰めるゆいのセリフは筆が走りましたね。普段自分が家族から言われていることや、反省すべき点を語らせればいいので(笑)。冷蔵庫を開けっ放しにしたことと、不倫と、さっきの言い方と……、一つのきっかけによってあれもこれもとランダムに怒られるのも、半分は経験が基になっています」
こうして2人の個性が組み合わさり、笑えて切ない唯一無二の離婚ドラマが出来上がった。
「僕1人で書いたら、大志がもっとポンコツでゆいもただのヒステリックな女性だった気がします。大石さんの懐深さが、作品に深みを与えてくれましたね」