80年代中頃、ロンドンのDJたちが、古く珍しいソウルミュージックやファンク、ジャズのレコードを、ダンスミュージックとして掘り起こしてプレーし、フロアを盛り上げていた。同時期にはアメリカのヒップホップDJたちも、過去の音楽をサンプリングし、新しいビートを作っていった。DJたちから愛された過去の音楽はレアグルーヴと呼ばれている。
10月に発売された書籍『レアグルーヴ 進化するヴァイナル・ディガー文化』は古典に、近年発掘された激レア作品を追加し、更新したディスクガイドだ。ヒップホップクルー〈KANDYTOWN〉のMASATOとMinnesotahに、レアグルーヴはどう響くのか。
過去の音楽が、新しい輝きを帯びる理由
Minnesotah
最初にやられたのはファットバック・バンド「Keep On Steppin’」(1974年)。サンプリングソースとして有名な曲でもあるし、ファンクだけどメロウさがあるから好きになって。
MASATO
レアグルーヴと呼ばれる曲は、当然昔のものだけど、普遍的なんだよね。オレはクール&ザ・ギャング「Chocolate Buttermilk」(69年)に衝撃を受けたんだけど、今のレアグルーヴといえば「Summer Madness」(74年)だよね。
Minnesotah
そうなんだよね。個人的な意見だけど、80年代や90年代のレアグルーヴはファンキーで踊れるものが中心だったけど、今はメロウかつディープなものになると思う。そういう曲をドープと呼んでいるけど。現行のヒップホップのサンプリングソースになる曲もドープが多いから、リンクしているのかもしれない。
MASATO
時代の流れで、聴き方が変わるから。
Minnesotah
そういう意味で、昔はゴミ扱いされていた日本盤だけど、今は面白いと思う。アメリカのオリジナル盤は、レコーディング後に各パートをミックスする段階で、音に凹凸がある。でも、日本盤は音がフラットできれい。シティポップが世界中で流行っているのも、クリアな音が求められた結果なんじゃないかな。
MASATO
ハワイのレアグルーヴや、ちょっと前のチカーノソウルとか、音がきれいで聴きやすいから好きなんだ。日本でも人気があるのもわかる。
Minnesotah
レアグルーヴは時代によって価値感が移り変わるけど、なんでもありの雑多感も増していて。この本(『レアグルーヴ 進化するヴァイナル・ディガー文化』)には、知らないレコードがいっぱい載っているから見ていて楽しいな。
MASATO
再発されていなさそうなオリジナル盤ばかりで、この本は参考になるよね。しかし、読みながら買っていたら、お金がいくらあっても足りなくなりそうだな。