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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第26回『コントありがとう』

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第26回。前回の「かが屋の大カロ貝展」も読む。


text: Kana Iguchi

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公演日:7月19日
公演名:コントありがとう

第26回『コントありがとう』

キングオブコントの予選も始まり、コントの夏が来ています!破壊ありがとうが主催するこのライブは、2〜15分の好きな時間でコントをやるというコンセプトです。

トップバッターを務めたのはどくさいスイッチ企画。R−1決勝での堂々とした1人コントが記憶に新しい彼は、長尺のコントで細かい部分を丁寧に描写します。涙を流すシーンではどくさいスイッチ企画の目が潤み、頬を伝うものがありました。汗だったのか涙だったのかはわかりません。けれど、今この人物はたしかに泣いたのだという説得力があり、感動してしまいました。

コントにおける「自然な会話」を見せていたのは破壊ありがとう。一人だけ状況を理解していないときの気まずさを描きました。トリオであるからできる多数派と少数派の構図がきれいで、気まずさに呑み込まれそうなくらいに静かな時間があり、それをフリとしたボケのフレーズによって大きな笑いが起こるという波の生まれ方が素晴らしく思いました。最後には登場人物たちがすべてを理解して涙を流します。心が解放されるような美しい感情が湧き起こり、筆者は泣いてしまいました。3人の叫びに似た歌は暗転のなか響き続けます。叫ぶことは祈りに似ており、死を悼むこのコントにおいて、祈りはすべてを浄化するようでした。

演者の涙は観客の涙になり、心を揺らします。お笑いは人の気持ちを豊かに動かすものだなと思いながら、エンディングで虹の黄昏が明るく大暴れするのを眺めていました。それもまた、お笑いのあり方なのです。

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