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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第20回『トリップ』

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第20回。前回の「『無限オープニング~MCがいないので飽きるまでオープニングをやって、余った時間でネタライブ~』も読む。

text: Kana Iguchi

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公演日:1月15日
公演名:『トリップ』

『トリップ』のフライヤー

受付でお金を支払って会場に入って思ったのは、無音だ、ということでした。ほとんどのライブでは開場中に流れているはずのBGMが流れていない。

不思議だなと思いながら座っていると開演時間にふわふわと音楽が流れて大きくなっていき、明転するとユビッジャ・ポポポーがゆっくり歩いてきてメインMCであると名乗りました。兄弟と、村上、元気そうでよかった。の2組はユビッジャに振り回され、オープニングは長く続きます。

ようやくネタが始まると、ネタパートはあくびぼうやをトップバッターに、かなり飛躍のある内容のネタが続いていきます。

特に驚きを感じたのはボディの一人コントでした。金曜ロードショーをテーマに、いくつもの裏切りを込めながら続いていくコントは、演説の様相を呈してきます。客席を見渡しながら語るボディの目の力に圧倒されました。

内容は、最初から全部変なことを言っているはずなのに、なぜかそれに説得されてしまい、頭がふわふわしてきてボディの言葉だけが体に入ってきます。

暗転になってようやく体が解放される気持ちがします。ネタをこんなに真剣に見たのは久しぶりのことでした。

ネタがすべて終了すると、企画としてモノボケコーナーが始まります。ユビッジャ・ポポポーが振り回す企画コーナーもまた夢のようで、この場における正しいことと正しくないことがどんどんわからなくなるような気持ちでした。

ドアを閉めると真っ暗になるアートスペースプロットは「夜の白昼夢」を見るのにはうってつけのライブ会場でした。

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