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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第13回 『大久保八億の火の鳥』

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第13回。前回の「めっちゃ最高ズ『最強で最高vol.5』」も読む。

text: Kana Iguchi

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公演日: 5月19日
公演名: 大久保八億の火の鳥

『大久保八億の火の鳥』のフライヤー

この日は筆者の誕生日。なにがお祝いになるかと考えて、大喜利と漫談に優れた大久保八億のお笑いライブを2本観ることに決めました。そのうちの1本がこのライブです。

オープニングトークで、大久保八億が人力舎の養成所に通っていたことを初めて知りました。その同期を中心に呼んだ、手塚治虫の火の鳥のように言えば「同期編」が今回のライブとのこと。

大久保八億の漫談は、ゲストのネタと交互に行う形で、ぜんぶで5本披露されました。漫談の中で彼はほんとうにネタの題材を信じ込んでいるかのように振る舞います。どうにも一つの思い込みが抜けない大久保八億は、その思い込みをスタートにどんどん想像を膨らませていきます。

その想像はあり得ない方向に進んでいき、話はめちゃくちゃになっていくのですが、知的な語り口に、妙に論理の通った言い分に、もしかしたら実在するのかも……?と説得されてしまいます。大久保八億が大久保八億から「降りない」、つまり大久保八億のままでいるからこそ起こる現象のように私には思えます。

題材のとり方にも興味は尽きません。そんなこと考えてもみなかった!という全く嘘の豆知識からはじまる漫談は、我々を説得力の渦の中に巻き込んでいきます。ただその知識はなんだったかは忘れてしまい、ただぼんやり牧場のことが思い出され、とにかく面白かったことだけが体に染み込みました。

エンディングでは同期たちを集めて楽しい、そして書けないようなことばかりの思い出トークが繰り広げられました。

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