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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第4回『HAVE A NICE DAY!』

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第4回。前回の「第3回『真夏の笑フェス2022』」も読む。

text: Kana Iguchi

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公演日: 8月19日
公演名: 『HAVE A NICE DAY!』

『HAVE A NICE DAY!』

ふたりのピン芸人、ひかるぶんどきとおべんとばこのツーマンライブには、ひかるぶんどきがさみしさのあまりにTwitterでのスペース機能で毎夜のように行っている配信、通称『ぶんスぺ』のリスナーが押し寄せました。

ふたりのユニットである〈ねえ、こっち見てよ〉のネタが4本、ピンネタをそれぞれ3本、ゲストのカントリーズ、スクールガール・ファンタジーが1本ずつネタを披露するボリュームたっぷりのライブで、とても濃い時間を楽しむことができました。

また『ぶんスぺ』でよく使われる言葉がライブ内でも飛び交います。たとえば「1,200円」。お母さんとひかるぶんどきがふたりでくら寿司に行き、茶碗蒸しなども頼んでお腹いっぱいに食べたら、ふたりで1,200円だった、というスペースでの定番話がネタ中で落語のまくらとして使われました。

しかし内輪ネタに終わらず、そうでなく笑える部分もたくさんありました。

ひかるぶんどきは人を愛したことがないと公言しています。誰かとお付き合いしたこともなく、しかし人を愛したいという気持ちは誰よりも持っている、そんな彼の描くネタは愛のことばかりで、その愛はとても自由です。天使と悪魔が愛し合ったり、女性同士が愛に溺れたり、種族も性別も問わない愛がそこでは繰り広げられ、まだ愛を知らないひかるぶんどきによって拡張されていきます。ひとりコントを行うコメディアンとしての立ち回りは一流で、大げさな動きと繰り返しに何度も笑わされてしまいました。

ひかるぶんどきはさみしさから逃れられない。ライブのオープニングでも「ライブって始まったら終わっちゃう」と駄々をこねていました。

みんなにしっかり愛されてるって、いつか気がつく日が来ることを願います。

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