甲斐みのりさんが薦める、全国各地の“地元”カスタード菓子

photo: Keiko Nakajima, Kagiryu / text: Emi Suzuki / food: Mika Ninomiya

全国には、その地域に伝わるソウルフード的なカスタード菓子が多数。そこで地方菓子に造詣が深い、文筆家の甲斐みのりさんがとっておきをセレクト。北は北海道、南は沖縄まで、地域性があり、ユニークなものばかり。

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文・甲斐みのり(文筆家)

菓子からパンまで懐深い名素材

日本各地を旅するさなか、それぞれの地域に根付く、さまざまな菓子やパンを味わってきた。その土地ごとに長いこと親しまれる名物があり、風土に基づき嗜好の傾向も異なるけれど、ときどき、わっと驚いたり、うーんと唸るような形や素材の掛け合わせに出くわすことがある。

和洋の概念を覆したり、独特な個性を放っていたり、第一印象は突拍子なく感じても、地元で愛され続けているものは口にして納得。はじめてなのにどこか懐かしさを覚える、妙にほっとする味わいがあるのだ。

ここで紹介するカスタードを使った菓子やパンは、洋菓子、和菓子、パンというジャンルの垣根を越えて、地元の顔となった名物たち。シュークリーム、プリン、クリームパンと、洋菓子の定番素材として馴染みのあるカスタードだが、ふんわりとしたカステラ生地でまろやかなカスタードを包んだ仙台銘菓「萩の月」に代表されるように、意外性がありながら巧妙でモダンな取り合わせとして、昭和の時代は和菓子にカスタードを合わせるのが流行った。

長崎〈梅月堂〉シースクリーム

新潟〈酒楽の里 あさひ山〉笹かすたーど

北海道〈セイコーマート〉ようかんパン(ホイップ&カスタード)

長崎〈平戸蔦屋〉カスドース

沖縄〈琉球銘菓 三矢本舗〉幻の味ブルース

広島〈メロンパン〉メロンパン

それから、一見すると奇をてらったように見えるものも、主役の素材を引き立てながら、ときに華やかに、ときに名脇役として、しっかりしっとり、カスタードが寄り添っている。

カスタードの定義が、卵と牛乳を使った菓子とされる中、安土桃山時代に伝来した南蛮菓子が起源と言われる「カスドース」や「鶏卵素麺」に牛乳は使われておらず、純粋な意味でこの2つはカスタード菓子に分類できない。それでも鎖国時代に貴重だった砂糖のまぶしい甘さの奥に、卵黄のコクを感じる黄金色の伝統菓子を食せば、日本中で親しまれる地元カスタードの始まりが、これら南蛮菓子にあると感じ入るだろう。

愛知〈ボンとらや〉ピレーネ(ダブル)

福岡〈松屋〉鶏卵素麺 たばね

愛知〈藤田屋〉大あんまき カスタード

福島〈光月堂パン店〉プリンパン

静岡〈マルキーズ〉メロンシャンテ