学び場と猫
机に向かって一生懸命ペンを動かす生徒たち。薩摩半島の南端にある指宿(いぶすき)市の小さな学習塾で、小学生から高校生まで、勉学に励む子供たちを“塾長”として見守るのが、メス猫のくれよんだ。
「授業中の教室にふらっと入ってきて教壇の上から生徒を見つめたり、隅でうたた寝をしたり、机に上って時々邪魔したりしています(笑)」
そう話すのは昇学塾代表の山元英樹さん。くれよんと出会ったのは2016年のこと。休みの日に熊本を旅行していた最中の出来事だった。
「宿の近くの道路上でうずくまっている仔猫を見つけました。親猫が帰ってこないかと様子を見ていたんですが、姿は一向に見えない。見放すこともできず、旅館に頼み込んで1泊だけ保護させてもらったんです。一緒に時間を過ごしたら愛着も湧いて、連れて帰ってきたのがきっかけです。“くれよん”の名は、親切にしてもらった宿の名前からつけました」
山元さんが2013年の開塾と同時に保護した先代の塾長、オス猫のしょうくんの優しい受け入れも助けになり、スクスク成長したくれよん。病で永眠したしょうくんに代わって2018年に2代目塾長に就任した。
自由気ままなちょっかいが受験生の集中力向上にも?
現在はくれよんのほか3匹のスタッフ猫も在籍。ゲージはなく、教室や廊下を自由に行き来しながら、お気に入りのカバンに身を寄せたり、机と机の間を颯爽と歩いたり、思い思いのスタンスで過ごしている。
「生徒たちの癒やしになるのはもちろん、休み時間を手持ち無沙汰に過ごす生徒に居場所を作ってくれたり、なかなか打ち解けられない生徒同士のコミュニケーションのきっかけになったりもしています。一方で、受験間近になると、生徒たちは隣に猫が来て邪魔しても気にしなくなる。集中力を鍛えるのにも、一役買っているかもしれませんね(笑)」