最高に面白い脚本を書く人に、面白がられていたい
ヒールからお調子者まで、魅力的に演じる岡部たかしさん。山内ケンジさんの演劇プロデュース・ユニット〈城山羊の会〉には立ち上げの頃から参加。「劇団ではないので緊張感はあります。声がかかると、山内さんはまだ(自分を)おもろいと思ってくれているんかなとホッとします」。
すべて当て書き。独特のシニカルな世界観に見事にハマる。「山内さんは物静かで文学的だし、ふざけたがりの僕みたいなタイプとは同じクラスにいても交わらなかったと思う。でも、山内さんほど圧倒的に面白い脚本を書く人と一緒に芝居ができて幸せです」

普通であることの滑稽さ。真骨頂はここに
3年前にKAAT神奈川芸術劇場で上演された〈城山羊の会〉の『温暖化の秋 −hot autumn−』は好評を博し、読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した。このたび、新作『勝手に唾が出てくる甘さ』で、〈城山羊〉がKAATに帰ってくる。岡部たかしさんは前作に続き出演。作・演出は人気CMディレクターで、劇作家、映画監督の山内ケンジさん。山内さんが演劇を始めた当初から、岡部さんは俳優として参加してきた。
「村松利史さんと岩谷健司さんと僕で〈午後の男優室〉というユニットを組んでいて、そこに山内さんに脚本を書いていただいたのが始まりです。その後、〈城山羊の会〉を立ち上げられて、僕も出させてもらいました。でも、最初の1、2作目は僕がへたすぎて、どうしたらいいかわからなかったですね」
人々は微笑みをたたえ、実際の感情とは少しずらした、たわいもない言葉を交わす。やがて物語は思わぬ方向に。〈城山羊〉の舞台は、他人の日常を覗き見ている感覚になる。
「山内さんの脚本は面白いから、役者は余計なことをしなくてもいいんです。面白くしようとするとすぐバレる(笑)。『狙っていて、全然面白くない。狙わないでそのまま言って。普通にね。そんな大きな声を出すなら聞こえない方がマシ』と怒られます。世界観を壊さないことが大事。台本で既に演出されている感じがします」
そうして「普通」を演じることを鍛えられてきた岡部さん。時に官能的な場面が登場する山内作品だが、舞台の岡部さんの色気はすごい。今や数々の作品に引っ張りだこだが、自身の意識は何も変わらず、芝居がとにかく楽しいと言う。現在、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』で、ヒロインの父親役を魅力たっぷりに演じている。脚本のふじきみつ彦さんも、昔から一緒に芝居を作ってきた仲間だ。
「ふじきさんの朝ドラに出られるなんて感慨深いです。村松さんには笑いを鍛えられ、山内さんや岩谷さん、本当にみんなに助けてもらって、僕はここまで来たんかなと思います」

チケットかながわ
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