曽我部恵一
すごく興味があって、展示には何度もお邪魔しました。呪物はどこで管理されているんですか。
はやせやすひろ
すべて自宅のリビングに飾っています。人形などはデスクに座ると目が合うようにして。
曽我部
僕もレコードや古着など、古いモノには所有者の積み重なりを感じるので好きなんですが、呪物はそれが半端ない。呪いのマリア像のオーラも本当にすごいです。
はやせ
反キリスト教の団体が、聖母マリア様を汚すために作ったものだそうです。聖母の像を作る際には厳格なルールがあるはずですが、それをまったく無視していますからね。
曽我部
肩や腕が可動式で、うつむいた表情のものなど見たことがない。
はやせ
数百年前のものです。首の部分には刃を入れた跡があり、邪悪な念が込められています。
曽我部
はやせさんは時代背景や辿ってきた物語も入念に調べられていて、そこも含めて呪物なんだなと。お話を伺っているうちに、怖いだけではなくホーリーで神聖な感じがしたんです。
はやせ
特に海外の民族ものは興味深い話が多いですね。ネパールのカパーラは、樹脂と高僧の頭蓋骨の粉末を練り込んで作ったもの。蓋状になっている頭部を開け、そこに自分の血液を入れると、偉人に近い徳の高い瞑想ができるそう。
曽我部
呪物はどういう経緯で入手しているんですか。
はやせ
最近、国内だと持ち主の方から譲っていただくケースが増えています。ただ、妹の人形(はやせさんが抱いているもの)は、骨董商から譲り受けたもので。大事にされていたものには、持ち主の念や気持ちが込められていて、中には不思議なことを起こすものもあるそうです。
曽我部
怪異はないんですか。
はやせ
僕には全然ないんですよ。僕の家族や都市ボーイズの岸本(誠)には影響があるみたい。
曽我部
なぜ、はやせさんには不思議なことが起きないんでしょう?
はやせ
まず、愛情や敬意を持って接すること。それから怪異や霊感に関して、松原タニシさんから聞いたんですが、ある研究者が面白い仮説を立てていて。虫は死んだ時に、その亡骸が仲間へ危険を知らせるためのフェロモンを出すそうです。
同じように、人間も亡くなった時に危険フラグとしてなにかを残していて、敏感な人にとってはそれが霊感なんじゃないかと。僕にはそれがないんでしょうね。
曽我部
僕もあわよくばいつかそういう体験をしてみたいです。