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“吉祥寺より西”の古本屋〈りんてん舎〉「三鷹を詩歌好きの集まる街に、という願いを込めて」

2019年、中央線沿線の武蔵野、国分寺エリアに、新しい古書店が数軒オープンした。時間の流れもゆったりした郊外の住宅地は、本とじっくり向き合うのに程よい環境なのだろうか。目指すべき注目の古本屋へ、いざ。

Photo: Ayumi Yamamoto / Text: Tomoko Kurose

三鷹を詩歌好きの集まる街にという願いを込めて。
りんてん舎(三鷹/東京)

「三鷹は、駅から少し離れると個性的な個人商店が点在して、散策するのにとても楽しい街なんです」と、2019年3月に〈りんてん舎〉を開店した藤田裕介さん。

大学を中退し、荻窪のささま書店で5年間働いた。独立に際し、三鷹を選んだのは、旧友の営む古書店〈水中書店〉があることも大きな理由だった。共に詩歌俳句の分野に力を入れたいと考えている。

「古書店の場合、同じようなジャンルの本を扱うことは、相乗効果を生みます。ゆくゆくは“三鷹に行けば詩歌が手に入る”と思っていただけるようになれたら嬉しいです」

〈水中書店〉が作成した、三鷹の小さなよりみちmapも置いている。店名は、大好きな尾形亀之助の詩から引用。藤田さん自身が短歌を詠む。将来的には店で歌会なども計画している。

とはいえ、取り扱いは詩歌に限らず、海外文学やアート、音楽、暮らしの本など幅広い。ジャンルや著者で分類せずに、緩やかなつながりで並べているところが興味深く、いつまでも棚に見入ってしまう。

「5冊くらいを1ブロックにして、ひたすら頻繁に入れ替えています。同じ本も、置く場所によって、タイトルの見え方が変わりますから」


1週間前に置いてあった本が同じ場所にあるとは限らないのだ。「いまはインターネットで欲しい本はいつでも手に入ります。でも、古書店は、常にその本に出会えるとは限らない。きっとタイミングを売っているのだと思います」

吉祥寺 りんてん舎 藤田さん
店主の藤田さん。バンド〈マンタ・レイ・バレエ〉でも活動。