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サマーウォーズ、ベイマックス、名探偵コナン……。SF作家・樋口恭介が惹かれるジュブナイルSF

家族、友達、ゲーム、漫画……様々なコミュニティやカルチャーが同列に存在し、不安定なバランスで成り立つ少年少女たちの世界。その中に奇怪な現象が入り込んだら?冒険と葛藤と青春の成長譚に大人も胸を打たれる、ジュブナイルSFの魅力を解剖。

初出:BRUTUS No.1011「夏は、SF。」(2024年7月1日発売)

text: Kentaro Okumura / edit: Neo Iida

少年少女の心を持った、すべての人に響くもの

僕はゼロ年代のインターネット文化の影響を受けていて、共有知によって人類は進歩するといまだに信じているところがあります。そんな僕にとって『サマーウォーズ』は最高の作品。“グループを作って協力する”ところなんか、まさにジュブナイルSF。

『サマーウォーズ』
監督:細田守/2009年公開/長野の田舎を訪れた高校生の健二は、人工知能「ラブマシーン」が引き起こした世界を揺るがす大混乱に立ち向かう。「田舎の風景と巨大コンピューターというギャップが最高です」

ゼロ年代以降でベストを挙げるなら『ベイマックス』ですね。ジュブナイルの頃って脳も成長途中で、現実と幻想の境目が曖昧。だからこそ非現実的な要素を取り入れやすいという特徴があるんですが、この作品は論理と飛躍のバランスがうまい。子供たちの理想がテクノロジカルに叶えられ、チームプレーでしかなし得ない形で地球を救うんです。

『ベイマックス』
監督:ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ/2014年公開/事故で兄タダシを失った天才少年ヒロの元に、タダシが開発したケアロボットが現れる。ディズニープラスで配信中。「幼い子供たちの視点に立ち、どう考え、どう行動するかがわかる」

かつてはSFでしかなかった技術が社会に浸透していると実感したのは『名探偵コナン 黒鉄(くろがね)の魚影(サブマリン)』。「老若認証技術」というAIが作品の肝に据えられているのですが、その技術については誰もが理解可能だという前提で話が進んでいく。今を象徴する作品だと思います。

『名探偵コナン 黒鉄(くろがね)の魚影(サブマリン)』
監督:立川譲/2023年公開/顔認証システムを応用した新技術のテストが進む八丈島の海洋施設で、女性エンジニアが黒ずくめの組織に誘拐される。「テクノロジーについてもしっかり押さえている。江戸川コナンの成長譚である点にも注目」

少年少女の世界に、奇怪な現象が入り込んだら?“ジュブナイル”SFの魅力を解剖