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ジョン・レノンや、チャールズ・ブコウスキーも猫を愛していました

気を許せる友人のようでもあり、気まぐれな恋人のようでもある大切な存在。そんな猫を抱きしめると、思わず頰は緩み、いつも以上にお互いの絆を実感できるものです。生粋の猫派だった、ジョン・レノン、チャールズ・ブコウスキーにとって猫とはどんな存在だったのか。

text: Emi Fukushima

「激動の人生、常にそばにいたのは猫だった」

20世紀を代表するミュージシャン、ジョン・レノンも生粋の猫派だった。幼少期には猫を友達のように慕い、毎日近くの市場に通っては、飼い猫に腹いっぱいの魚を食べさせていたそう。そしてビートルズ時代も、オノ・ヨーコとダコタハウスで暮らしていた時も、常にそばには猫がいた。

注目すべきはネーミングの独特さ。自らの伯母やマネージャー、たまたま知り合いだったヒンドゥー教の尊師など、ずぼらにも周囲の人のファーストネームをそのまま飼い猫に名づけたかと思えば、ピアノの白鍵と黒鍵にちなんで白猫にメジャー、黒猫にマイナーと名づけ、音楽家ならではの洒落を効かせたり。

さらには、自らの“僕たちはキリストよりも人気がある”発言が物議を醸したことを受け、皮肉を込めて飼い猫を「ジーザス」と名づけたり。彼にとっていかに猫が密接な存在であったかが窺える。

また晩年、息子ショーンのために熱心に描いた絵本にも、多くの猫たちが登場。激動の人生、日々目まぐるしい変化に相対する彼を支えたのは、猫との変わらない暮らしだったのかもしれない。

「猫は人生の救世主であり、最高の師である」

「猫に囲まれて暮らすのはいいものだよ。気分が落ち込んだとき、猫たちを見れば、元気になれる。(中略)まさに救世主だよ」。生前そう語ったのは、稀代の作家、チャールズ・ブコウスキー。酒浸りでギャンブル癖に放浪癖あり。その破天荒な人生に光を与えた存在こそ猫だった。

「猫をたくさん飼う人ほど長生きする」と信じていた彼が共に暮らしたのは、「マンクス」という名の尾のない白猫や「ブッチ・ヴァン・ゴッホ・アルトー・ブコウスキー」という文化人風の大仰な名の片耳の猫など様々。飼い猫たちへの思いは、彼の数々の詩や自伝的小説の中でも綴られている。例えば詩「MY CATS」では、彼らが不満気な顔はしても悩まないこと、いつだって誇らしげに闊歩(かっぽ)するさまなどに触れ、自らの生き方の“師”であると表現した。

また晩年のエッセイ『死をポケットに入れて』では、“来世でわたしは猫になりたい。(中略)人間は惨めで怒りっぽくて狭量すぎる”とも。一貫して彼が感じていた浮世の生きづらさは、型破りな筆致と猫への大きな愛に投影されていた。