「キャンバスからハミ出せ」の言葉を心に、描く
ジミー大西の創作の根底にあるのは、憧れの存在の岡本太郎からかけられた言葉だという。
「太郎先生には直接お会いすることはできなかったんですが“四角い枠を気にせず、キャンバスからハミ出しちゃえばいいんだ”という言葉をもらいました。これは僕の作品作りにおける永遠のテーマ。第1弾では“四角い枠からハミ出す”、第2弾は“物語の枠をハミ出す”、第3弾では“前にハミ出していく”。そして構想中の第4弾を京都で発表したいと考えています」

大胆にして繊細、色鮮やかなジミーワールド
2026年冬に京都での開催が予定されているジミー大西の展覧会『ホームタウン』。これまで長崎、富山、大分と巡回してきた展覧会は、「自分がずっと住んでるつもりになって絵を描くんです」というジミー大西の言葉通り、場所に焦点を当てた大規模原画展だ。開催地ごとにその町で過ごし、その土地を自身のホームタウンとして描いた新作が加わっていく。
その6つ目の町として選ばれた京都では、展覧会に先駆けスピンオフ展が開催されている。マルタ、ローマ、南極、パリ、沖縄、富山、日本橋(東京)、長崎と各地を巡り、描いてきたこれまでの代表作12点を展示。最初期の《マルタ》から最新作《長崎》まで33年の軌跡を辿りながら、緻密な筆遣いや鮮やかな色彩を間近に見ることができる。
「例えば《南極》なら、立体造形を作るのはもちろん、ベースのキャンバス作りから始まって、ボール紙に絵の具を染み込ませたりと制作に1年かかった大作です。アズール・ウィンドウやボンネット型のマルタバスを描いた《マルタ》も見てほしい作品の一つ」
スピンオフに続く展覧会では、どんな京都が切り取られ、作品に描かれるのだろう。

「京都は昔から家族とよく来ていて、最初のデートも嵐山でした。世界を旅してきましたが、やっぱり古都の雰囲気も街並みも好きなんです。タイムスリップ感覚になることも」
そんな思い入れの深い京都での制作テーマは、ハミ出すという原点のさらなる進化。「京都の建物を、いかに自分らしく描いていけるかが今回の目標。京都三景になるか四景になるかわかりませんが、トントントンと何枚か並べていこうと思っています」
1年後に向け構想はすでに動きだしている。
「京都はね、彫刻に挑戦します。木を使って色も塗りますよ。キャンバスをハミ出す、というのを今度は第4弾として彫刻でやってみるつもりです。あ、言うてしもた!」