〈ジル サンダー〉の共同クリエイティブ・ディレクターを務めるルーシー&ルーク・メイヤーが、アーティストや写真家とコラボレーションするプロジェクトは、2020年からスタートした。
第1弾は、オリヴィエ・ケルヴェルヌが手がけた「Sicily」。第2弾は、アンダース・エドストローム、オリヴィエ・ケルヴェルヌ、クリス・ローズ、リナ・シェイニウス、マリオ・ソレンティといった親交の深い5人の写真家と「Familiarity」を刊行している。
そして、第3弾となる今回は、写真家のクリス・ローズが挑んだ。テーマは、2022年春夏コレクション制作でも着想源となった“都市”という文脈。偶然の出会いや瞬間を探すため、彼は仲間たちとともに、パリの街を歩き回り撮影した。
その場の空気感まで漂ってきそうな衣服や身体の一部、都市のディテールを捉えた写真は、繊細なバランスと親密さを帯びている。脚色は一切せず、本能的に切り撮った街並みのカットは、ほとんどパリだとは見分けがつかない。そこには、すべての都市の寓話として、特定の場所というよりもむしろ印象として、都市性、そして人々とともにいることや自由であることへの願いや欲求を象徴している。
クリスの写真は、ルーシー&ルークの美意識の背後にある創作過程と意図について、独特な識見を与えてくれるのも魅力だ。また、ひと続きのイメージは、接触と交流、ボリューム、形、色彩、ファウンド・オブジェ、光、垣間見える建物や通り、昼と夜が交差する、ノンリニアで自然な振付を描き出す。
「私たちの仕事に新たな次元を見出すこと。世の中において自分たちが手掛けることを見つめるのは大切なことです。そして、クリスと私たちは親和性が高く、彼が私たちのビジョンの境界を広げてくれることを非常にうれしく思っています」とルーシー&ルークは語っている。