ハナレグミ・スペシャル毛鉤を巻いて、舞台衣装を着たオイカワさんに会いに行く
ジェリー鵜飼
簡単な毛鉤(けばり)を作るところからやってみようか。年齢的にも小さな針が見えなくなってきてるから(笑)、一回りだけ大きいものを作ります。オイカワ用ね。
永積 崇
オイカワさんが考えた毛鉤ってこと?
ジェリー
いやいや、オイカワっていう魚の名前だよ(笑)。
永積
あ、そうか!フライを作る一人のおじさんのことを言っているのかと思った。オイカワ・スタイルみたいな。
ジェリー
「今日は、オイカワで行くか」みたいなね。
永積
カラフルな毛鉤もあるんですね。
ジェリー
そうそう、暗い山の中とか森の奥とか、川面で目立たせたい時にはカラフルな毛鉤を使ったりもする。
永積
ちなみにここにある毛鉤は、すでにある形に沿ったもの?それともジェリーさんが発案したもの?
ジェリー
ある形に沿って作っているんだけど、毛鉤は釣れるならなんだっていい。ちょっと失敗して形が崩れている方が釣れることもあるくらい。川に落ちた蛾が、傷ついていたりするでしょう?崩れた毛鉤は、そう見えているんじゃないかって言う人もいるね。弱っている方が魚も捕食しやすいはずだから。でも、本当のところは魚に聞かないとわかんないけどね。
永積
なるほど。この毛鉤は、とても優しい色ですね。
ジェリー
今日は多摩川の支流の野川に行くから、ユスリカを模したもの。よく虫が塊でモワーッとなっているでしょう。早速、針に糸を巻きつけてみますか。雑でもいいからね。
永積
こういう細かい作業、好きなんですよ。ティッシュで「こより」を作ったりするのも得意。細く巻いてね。水の中からどんなふうに見えるのか、オイカワ気分になってみないと。
ジェリー
そう、それが大事。せっかく崇君が巻いているから、少し派手な色も入れたいけど、どの色の糸がいい?
永積
インスピレーションとして、メロン味はどうでしょう。
ジェリー
お、いいね、夏だしね。婚姻色が出ているオイカワのオスって、すげーかっこいいんだよ。ハナレグミのステージ衣装みたいな感じ。
永積
それはぜひ対面したいな。
ジェリー
ただ、オスはなかなか釣れないんだ。過去に自分が釣った経験から言えば、メスは比較的穏やかなところ、オスは流れが強いところにいる。もう一つ毛鉤を巻いておこうか。今度は何色にする?さっきとは違う赤やオレンジはどう?
永積
暖色系で、秋を先取りしましょうか。サーモン感あるな。この色合いで、旨味を感じるんじゃないかと。出汁(だし)毛鉤。My First毛鉤。釣れる気しかしないです。
ジェリー
いいね、崇オリジナル。毛鉤を巻く時は、「俺だったら食うな」っていうマインドが大切だからね。
永積
普段は入らない川にズブズブ入っていく感じ、なんだか悪いことしているみたいな気分になりますね。
ジェリー
お、アオダイショウがいた。
永積
うわっ、デカい!川は、生命感あるなあ。
ジェリー
カワセミもたまにバシュンッて飛び込んで、くちばしに魚をくわえて出てくるよ。オイカワも泳いでいる群れが見えるね。まずはメロン味で行こうか。結んであげるから、とりあえず振ってみよう。毛鉤は小さくてよく見えないから、「あのへんにあるんだろうな」みたいな気持ちで振ってみて。
永積
おお、うまく飛ばないけど、これだけで楽しい。
ジェリー
崇君、初めてにしてはとても上手だよ。釣りになっているもの。僕なんて先輩に巻いてもらったフライを木の枝に引っ掛けて、一度も着水せずになくしたことあるから。少しずつ場所を変えつつ、流れを見ながら投げてみて。メロン味に反応しなかったら、出汁毛鉤に替えてみようか。
永積
お願いします。
ジェリー
あの流れが緩やかなあたりに投げてみて。あっ!
永積
今、跳ねた。食ってきたの?
ジェリー
多分。惜しかったな。