Play

Play

遊ぶ

ジェリー鵜飼×永積 崇のご近所フィッシング。舞台衣装を着た“オイカワさん”に会いに行く

釣りを始めたいけれど、どうしたらいいかわからない。そんな時は、釣りをしている先輩に遊んでもらうのが手っ取り早い。まずは仕事を通じた旧知の仲のアーティストたちによる、ご近所フライフィッシング。並んで竿を出すと普段とは違う関係性が立ち上がる。


本記事は、BRUTUS「釣りの入口。」(2025年9月1日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Taro Hirano / hair&make: Masaki Takahashi (Nagazumi) / text: Toshiya Muraoka

ハナレグミ・スペシャル毛鉤を巻いて、舞台衣装を着たオイカワさんに会いに行く

ジェリー鵜飼

簡単な毛鉤(けばり)を作るところからやってみようか。年齢的にも小さな針が見えなくなってきてるから(笑)、一回りだけ大きいものを作ります。オイカワ用ね。

永積 崇

オイカワさんが考えた毛鉤ってこと?

ジェリー

いやいや、オイカワっていう魚の名前だよ(笑)。

永積

あ、そうか!フライを作る一人のおじさんのことを言っているのかと思った。オイカワ・スタイルみたいな。

ジェリー

「今日は、オイカワで行くか」みたいなね。

永積

カラフルな毛鉤もあるんですね。

ジェリー

そうそう、暗い山の中とか森の奥とか、川面で目立たせたい時にはカラフルな毛鉤を使ったりもする。

永積

ちなみにここにある毛鉤は、すでにある形に沿ったもの?それともジェリーさんが発案したもの?

ジェリー

ある形に沿って作っているんだけど、毛鉤は釣れるならなんだっていい。ちょっと失敗して形が崩れている方が釣れることもあるくらい。川に落ちた蛾が、傷ついていたりするでしょう?崩れた毛鉤は、そう見えているんじゃないかって言う人もいるね。弱っている方が魚も捕食しやすいはずだから。でも、本当のところは魚に聞かないとわかんないけどね。

永積

なるほど。この毛鉤は、とても優しい色ですね。

ジェリー

今日は多摩川の支流の野川に行くから、ユスリカを模したもの。よく虫が塊でモワーッとなっているでしょう。早速、針に糸を巻きつけてみますか。雑でもいいからね。

永積

こういう細かい作業、好きなんですよ。ティッシュで「こより」を作ったりするのも得意。細く巻いてね。水の中からどんなふうに見えるのか、オイカワ気分になってみないと。

ジェリー

そう、それが大事。せっかく崇君が巻いているから、少し派手な色も入れたいけど、どの色の糸がいい?

永積

インスピレーションとして、メロン味はどうでしょう。

ジェリー

お、いいね、夏だしね。婚姻色が出ているオイカワのオスって、すげーかっこいいんだよ。ハナレグミのステージ衣装みたいな感じ。

永積

それはぜひ対面したいな。

ジェリー

ただ、オスはなかなか釣れないんだ。過去に自分が釣った経験から言えば、メスは比較的穏やかなところ、オスは流れが強いところにいる。もう一つ毛鉤を巻いておこうか。今度は何色にする?さっきとは違う赤やオレンジはどう?

永積

暖色系で、秋を先取りしましょうか。サーモン感あるな。この色合いで、旨味を感じるんじゃないかと。出汁(だし)毛鉤。My First毛鉤。釣れる気しかしないです。

ジェリー

いいね、崇オリジナル。毛鉤を巻く時は、「俺だったら食うな」っていうマインドが大切だからね。

永積

普段は入らない川にズブズブ入っていく感じ、なんだか悪いことしているみたいな気分になりますね。

ジェリー

お、アオダイショウがいた。

永積

うわっ、デカい!川は、生命感あるなあ。

ジェリー

カワセミもたまにバシュンッて飛び込んで、くちばしに魚をくわえて出てくるよ。オイカワも泳いでいる群れが見えるね。まずはメロン味で行こうか。結んであげるから、とりあえず振ってみよう。毛鉤は小さくてよく見えないから、「あのへんにあるんだろうな」みたいな気持ちで振ってみて。

永積

おお、うまく飛ばないけど、これだけで楽しい。

ジェリー

崇君、初めてにしてはとても上手だよ。釣りになっているもの。僕なんて先輩に巻いてもらったフライを木の枝に引っ掛けて、一度も着水せずになくしたことあるから。少しずつ場所を変えつつ、流れを見ながら投げてみて。メロン味に反応しなかったら、出汁毛鉤に替えてみようか。

永積

お願いします。

ジェリー

あの流れが緩やかなあたりに投げてみて。あっ!

永積

今、跳ねた。食ってきたの?

ジェリー

多分。惜しかったな。

No.1038「釣りの入り口。」ポップアップバナー